2017-05

2015・11・27(金)オッコ・カム指揮ラハティ響のシベリウス(2)

      東京オペラシティ コンサートホール  7時

 第2日の今夜は、交響曲の「第3番」と「第4番」、その間に「ヴァイオリン協奏曲」を挟んだプログラムになっている。
 やや渋い選曲のせいか、昨夜は満杯だった客席にも、ほんのわずかだが、空きも見られた。しかし、とにかく熱心なシベリウス愛好家たちが詰めかけているので、うれしくなる。ホール全体が息を呑んで、シベリウスの音楽に集中しているという雰囲気である。

 飾らぬ、素朴な音の素晴らしさ━━という印象は、今夜の演奏でも変わらない。「第3番」での最初のチェロとコントラバスの導入のフレーズに、カムがちょっと表情をつけていたのがむしろ違和感を抱かせたほどで、そのあとのフルート、オーボエ、クラリネットによる主題が、まあ何と鄙びた率直な、しかし温かい民謡調の雰囲気を感じさせたことか。
 シベリウスの音楽は、とかく北欧の大自然を思わせる清涼さ、厳しさ、巨大さなどというイメージで受け取られることが多いけれども、こんなヒューマンな素朴さも備えているのだ、ということを、この演奏は教えてくれる。シベリウスが国民楽派の作曲家であり、民族主義の作曲家であることを主張する演奏、とでも言ったらいいか。

 協奏曲でソロを弾いたのはペッテリ・イーヴォネンという大男で、この人のヴァイオリンがまた実に骨太で素朴な味の、しかも深い情感を持った音色と表情を聴かせて面白い。極端な喩え方をすれば、この曲そのものが完全な民謡調の、民族主義音楽の塊ではないか、という気さえ起させる演奏なのだ。

 彼は、第1楽章と第2楽章を、たっぷりと遅いテンポで、深々と弾く。その素朴な歌をじっくりと支えるカムとラハティ響の、しっとりした和音の神秘的な拡がりが素晴らしい。この曲にはこういうスタイルの表現もあるのだと、不思議に感心させられる演奏であった。彼がアンコールで弾いたイザイのソナタ「バラード」も、これまた不思議に民族的な土の匂いを感じさせる音楽に仕上げられていた。

 一方、「第4交響曲」では、カムとラハティ響は、冒頭のチェロとコントラバスのフォルティシモを、強烈な鋭いアタックの演奏で開始する。これは衝撃的だ。そのあとも、全曲は厳しい表情で貫かれた。「3番」までの温かさは、さすがにこの曲では、影も形もなくなる。シベリウスの交響曲の中で、この曲がたしかに異色の存在であることをはっきりと示すカムとラハティ響の演奏であった。

 アンコールは、「悲しきワルツ」、「クリスティアン2世」からの「ミュゼット」、最後に「鶴のいる風景」の計3曲。連夜の大サービスだ。私にとっては、「ミュゼット」がナマで聴けたのが嬉しい。これは本当に愛らしい曲である。
 終演は9時35分になった。昨日と同様、そのあとにはサイン会が行われたはずである。このサービス感覚たるや、見上げたものだ。

コメント

同時にかつてのシェフ、ヴァンスカが読響を振る。指揮者で選べばヴァンスカだけれど、オケで選べば本場モノか・・・と、まさに究極の選択を迫られヴァンスカを選びました。こちらも名演でした。

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