2017-07

2015・11・16(月)広島交響楽団「2つの交響曲HIROSHIMA」

     JMSアステールプラザ大ホール(広島) 7時

 広島市文化財団アステールプラザや中国新聞社他が主催する被爆70周年記念事業「ヒロシマの追憶と飛翔~二つの交響曲HIROSHIMA」と題された演奏会。
 エルッキ・アールトネンの「交響曲第2番 HIROSHIMA」と、團伊玖磨の「交響曲第6番 HIROSHIMA」が演奏された。ともに、滅多に聴く機会のない交響曲である。
 演奏は、高関健指揮の広島交響楽団(コンサートマスター・佐久間聡一)。後者での協演は、並河寿美(ソプラノ)と赤尾三千子(横笛)。

 フィンランドの作曲家エルッキ・アールトネン(1910~90)のこの交響曲は、1955年8月15日の「終戦10周年記念特別演奏会」で朝比奈隆指揮関西交響楽団により日本初演されたもの。同年、同じ朝比奈と関響により、京都でも1度演奏されたとか。
 これは1949年に作曲され、朝比奈隆が1953年12月にヘルシンキを訪れた際に、アールトネンから直接スコアを手渡されたのだという。広島の悲劇を大管弦楽の作品とした例としては、おそらく世界最初のものとのこと。

 このスコアはその後、長年にわたり大阪フィルの倉庫に眠っていたらしいが、ある時「ヒロシマと音楽」委員会委員長の能登原由美さんの照会で、大阪フィル顧問の小野寺昭爾さんが倉庫を調査、そのスコアを発見して、今回の再演が実現した由。したがって、60年ぶりの再演━━というのが話題になっている。
 演奏時間は約30分。作風はトラディショナルなものだが、シベリウスの影響が前半のいくつかの個所に聞かれるあたり、やはりフィンランドの作曲家ならではの特徴だろう。中国風の曲想もちらりと顔を覗かせるけれども、これはまあご愛嬌という程度のものである。

 故あって先日、フィンランドのオーケストラが最近演奏したというこの曲のライヴ録音を送ってもらい、聴くことができた。そこではシベリウスの「4つの伝説曲」や「第4交響曲」などからの影響を含め、いかにもフィンランドの音楽らしく陰翳に富んだ音楽だ、という印象を得たのだが・・・・。
 ところがどういうわけか、今日の演奏では、全く印象が違った。作曲者が「火の爆風」とか、「裡にみなぎる根源的な力の反映」(能登原訳)と表現した楽想も、あまりそれらしく聞こえて来ない。━━どうも指揮者とオーケストラは、この曲よりも、後半の團伊玖磨の交響曲の方に強く共感しているので、今夜はそちらの方に全力を傾注したい・・・・という魂胆が見え隠れするような演奏だったのである。些か苦笑を抑えきれなかった。

 で、予想通り、後半の團伊玖磨の「第6交響曲HIROSHIMA」は、この上なく立派な演奏になった。
 こちらは原爆の悲劇を直接描いたものではなく、広島のエネルギーを象徴させた大交響曲である。今日の演奏時間はちょうど50分。作曲者がウィーン響を指揮して録音した演奏(1989年)より3分以上も短い。それだけテンポも速めだったが、主題構築の明快さ、起伏の大きさ、響きの緻密さなどを含め、作品の性格をよく再現した高関の指揮であった。

 広響の演奏も、第1部でのガサガサした感じの演奏からは一転した。弦の音色の良さと、張り切った活力は、現在の広響の演奏水準を如実に示したものといって間違いない。
 横笛の赤尾三千子は、この曲が1985年10月4日に作曲者指揮の広響により初演された時も、ウィーン響とのレコーディングの時にも協演していた人だ。彼女にとってこれは、自家薬籠中の作品であろう。

 また終楽章で並河寿美により歌われた詩は、エドマンド・ブランデンが日本で詠んだ「ヒロシマ、1949年8月6日に寄せる歌」というもの。アールトネンが前述の交響曲を作曲したのが偶然にもこの年だったということは、今日の広島を題材にした2つの交響曲同士の、不思議な因縁を感じさせる。

 演奏の前には、能登原さんによるプレトークがあり、アールトネンと、彼の「第2交響曲」の広島初演にまつわる話などが紹介された。「被爆十年後の広島公演をめぐって」という彼女の論文はネットでも読むことができるが、非常に興味深い内容で、大いに参考になる。
 なお井上道義と大阪フィルも、このアールトネンの「第2交響曲」を、来月・12月5日に西宮で、6日に広島の三原で演奏することが決まっている。
 ホテル・グランヴィアに宿泊。ここは新幹線駅直結なので楽だ。
           ⇒モーストリー・クラシック2月号 公演Reviews

コメント

タイトルを見て反応しましたが、さすがに大友直人の指揮で、佐ブラゴーチ氏の「HIROSHIMA交響曲」ではなかったですね。

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