2008-05

7・7(土)エクサン・プロヴァンス音楽祭 
モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」

アルシェヴェーシェ劇場

 もともと予定はなかったのだが、たまたまチケットが2日分だけ手に入ったので、急遽訪れた次第。マルセーユの空港に降り立つと、南欧の目に染みるほどの青空が実に美しい。そのかわり、日差しの強さは目も眩むほどで、ホテルから会場まで歩くにはすこぶる忍耐を要する。

 アルシェヴェーシェ劇場は、昨年まではメインの大会場として使用されていた半野外劇場。建物の中庭に設けられており、客席の前方は星空を望み、後方は2階席スタンドに覆われる。オーケストラの響きはあまり良いとは言えない。こんな室内オペラ的な会場でありながら、昨年はよくぞあのような大編成オケによる「ラインの黄金」を演奏できたものだと感心する。

 ダニエル・ハーディングが指揮するマーラー・チェンバー・オーケストラが、例の尖ったスタイルで演奏する。残響の豊かな、もっと小さなホールで聴いたなら、これは至高の音楽ともなるだろう。問題は、その響きよりも、テンポである。アーノンクールの指揮にも言えることだが、このテンポと「間(ま)」の設定には、私はいつも苛々させられるのだ。もっとストレートなテンポを保って進められないものかとさえ思うのだが、しかしそのくどい「間」やリタルダンドに演技がぴたりと合っているという作りだから、ドラマとして立派に成立していることは認めなければならぬ。

 その演出は、ヴァンサン・ブッサール。ルクセンブルク大劇場との共同制作によるエクサン・プロヴァンス音楽祭の新制作プロダクション。舞台上の小道具といえばマットレスと椅子だけというシンプルなもの。人間相関図にはあまり妙な深読みとかこじつけはなく、オリジナル通りのストレートな設定が行なわれているが、各人物の性格表現にはすこぶる微細な動きがあり、ドラマとしても愉しい。

 歌手陣ではネイサン・グン(伯爵)とマリー・マクローリン(マルチェリーナ)に存在感があり、ジョルジョ・カオドゥーロ(フィガロ)は比較的無難、マリン・クリステンソン(スザンナ)は柔らかい声だが、声そのものにはシンが不足してこのスタイルの中ではやや異質だろう。
 
 夜9時半開演だったので、終演は深夜1時15分。南欧の連中はどういう感覚でこんなスケジュールを組むのやら。しかもお喋りをしつつ、のんびりと(だらだらと、という感じか)歩く欧州の爺さま婆さまたちのおかげで、会場を出るだけで10分以上も時間がかかる。足早に歩くであろう若い観客が少ないのには驚かされる。この観客の年代構成は、由々しき問題ではなかろうか。

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