2017-10

2015・11・1(日)ジョワ・ド・ヴィーヴル 第1部「祈り」

    東京芸術劇場コンサートホール  3時

 東京芸術劇場の開館25周年記念として企画されたコンサート。「ジョワ・ド・ヴィーヴル」とは「生きる喜び」という意味。

 今回は若手の注目株、鈴木優人がアーティスティック・ディレクターとして采配を振り、自ら指揮し、ポジティフ・オルガンを弾く、という八面六臂の活躍を示した。彼はプログラム冊子の冒頭にも━━食材も調理法も今までにまったくないコンセプトで・・・・オードブルが「祈り」、お魚が「希望」、お肉が「愛」で、といったような挨拶を自ら書くという洒落っ気ぶりである。

 ホールの「何とか記念」というと、普通は上層部のハンコをたくさん捺したような、公共性を重んじたようなお堅い(?)雰囲気の企画が多いものだが、今回のようにフレッシュな若手音楽家一人に企画と構成を任せ(もちろんホールの事業担当との協同作業にはなろうが)、その個性で全体をまとめ上げるというイメージの試みは、非常に有意義で面白い。
 放送にしても雑誌にしても、新聞にしても、大きな組織でなく、1人のプロデューサーなり編集者なりが責任を持ち、独自の個性に基づいて企画を展開するという方法を採るシステムが、一番面白くなるのである(アメリカのFM局にもこの形態を採るものが多い)。
 しかも今回のこの企画が、私立のホールでなく、なんと「東京都」の生活文化局に属する東京芸術劇場で行われたというのも、これまた興味深い。

 さてその演奏会だが、第1部は「人の声と、3種類のオルガン、そしてダンサーの身体が形成する『祈り』の空間」(プログラム冊子による)というコンセプトで、全14曲がほぼ1時間、切れ目なしに演奏されるという内容だった。グリニー、ギョーム・ド・マショー、リゲティ、ペルト、アラン、モーツァルト、バッハ、スウェーリンク、ラングなどの作品に、鈴木優人の自作や即興演奏を織り交ぜるというプログラムである。

 鈴木は舞台上でポジティフ・オルガンを弾きつつ指揮をし、それを時には円形に取り囲むように立つバッハ・コレギウム・ジャパンの合唱が、薄明の光の下で素晴らしく清澄な、深々としたハーモニーを聴かせる。終結近く、デイヴィッド・ラングの「愛は強いから」での、無限に反復される音型(バス)の上に木魂する女声のフレーズでは、陶酔的な感覚に引き込まれた。

 上方のオルガン席では石丸由佳が演奏し、しかもこの劇場の売りものである2種のオルガンを反転させるデモンストレーションまで織り込まれる(転回の際にガタピシとノイズが少し混じるのが問題だが)。
 そして、ダンサーの小尻健太が視覚に彩りを添える。合唱の際に字幕が投映されたのも、歌詞の内容を理解するのに役立っていた。

 照明演出を加えて舞台に変化を出した1時間、ダンスを交えつつ切れ目なく続いた演奏は、実にユニークで見事な企画であった。演奏内容の点でも、大成功と言えるだろう。

コメント

生きる歓び「祈り」

鈴木優人氏の得意分野(?)の方の第一部だけききましたが、演奏がすばらしかっただけでなく、合唱、オルガン、パフォーマンスが一つのまとまりある表現となって美をつくっていた点にとても感動しました。ただうまくまとめました、という小器用ではない、大衆迎合性を排したディレクターの鈴木氏の強い意志のようなものを感じた点が大きな驚きでした。このような知性をもった若い音楽家が日本にいるのか!と。東京芸術劇場もやりますね。

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