2017-08

2015・10・31(土)イルジー・ビエロフラーヴェク指揮チェコ・フィル

      サントリーホール  6時

 スメタナの「モルダウ」、ラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」(ソリストはダニール・トリフォノフ)、チャイコフスキーの「交響曲第5番」。相も変わらず判で押したような、同じような「名曲」ばかり━━。
 とはいうものの、演奏そのものは、非常にいい。特に自国のチェコものは、文句のつけようのない素晴らしさだ。

 「モルダウ」など、弦の豊かに波打つ厚みのある響きが、なんとも見事である。眼を閉じて聴いていると、月光の下に煌めく美しい流れ、渦巻きつつ岩を噛む激浪の大河といった、この交響詩に描かれている標題通りの光景が瞼に浮かんで来るよう。
 それにアンコールで演奏されたスメタナの「売られた花嫁」序曲と、オスカル・ネトバルの「悲しみのワルツ」の美しさも、特筆すべきものだ。弦のしっとりした豊かな柔らかい音色が、これらの作品にこめられたヒューマンな情感を余すところなく再現してくれる。

 こういった演奏を聴いていると、ビエロフラーヴェクのもとでチェコ・フィルは、紛れもなく往年の━━ターリヒはレコードでしか聴いていないけれども、少なくとも1950~70年代のアンチェル、ノイマン、コシュラーといったような指揮者たちの時代の━━瑞々しいアンサンブルと音色を取り戻しているように感じられる。かつて一世を風靡した「チェコの弦」が、今や完全に甦っているようだ。

 もっとも、チャイコフスキーの「5番」の方は、その強力な弦をさらに強くぴりぴりと弾かせる手法が、何か一種の押しつけがましさを感じさせて、どうも馴染めなかった。もちろん悪い演奏ではないし、音色だけでどうこう言うのではもちろん無いけれども、この「5番」は、しっとりと瑞々しいことは事実だが、翳りに乏しい。

 ラフマニノフの「2番」を弾いたのは、トリフォノフ。演奏も舞台上の挙止も、若々しくて爽快だ。ファツィオリのピアノの澄んだ音色を駆使して、ひたむきな情熱を華麗に噴出させる。素晴らしい魅力を備えた若手ピアニストだ。
 ただ今日は、2階席正面で聴く限りでは、最強奏のテュッティがやたら多い第1楽章ではピアノがオーケストラにマスクされ、ほとんどと言っていいほど聞こえなかった(1階席では聞こえたという)。
 もともと彼のピアノはいわゆる豪快な音ではなく、どちらかと言えば清楚なフレッシュさが売り物だから、これは指揮者に責任があるだろう。だが第2楽章と第3楽章、それにソロ・アンコールでのメトネルの「忘れられた調べ」からの「回想的に」では、彼の清新な音楽の本領が発揮されていた。

 終演は8時35分という長丁場。

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