2017-06

2015・10・30(金)トゥガン・ソヒエフ指揮ベルリン・ドイツ交響楽団

     東京芸術劇場コンサートホール  7時

 シューベルトの「ロザムンデ」序曲、メンデルスゾーンの「ヴァイオリン協奏曲ホ短調」(ソリストは神尾真由子)、ベートーヴェンの「交響曲第7番」というプログラム。

 東京文化会館大ホールに比べ残響の長い、よく響くこのホールで聴くと、オーケストラの音色もガラリ違い、余韻と膨らみと重量感がいっそう出る。
 特に低音域の動きに力感が加わるので、「7番」第1楽章と第4楽章のそれぞれ終結部にあるオスティナートも、存在感を以って響いて来るというわけだ。

 今日の「7番」の演奏は、3日前の来日直後の演奏会におけるそれとは違って、見違えるような集中力を感じさせた。やはりあの時は、旅疲れでもしていたのだろうか? いわゆるドイツのオケの音としてわれわれが昔から抱いていたイメージ━━重低音に支えられた芯の強い響きがこのオケに甦っている。マゼールやシャイーやアシュケナージがシェフを務めていた時代には影を潜めていたその音色である。

 ソヒエフは、トゥールーズ・キャピトル国立管を指揮している時もそうだが、そのオケの国のレパートリーを手がける時には、そのお国柄に合わせることが多い。今回のベートーヴェンもその例に入るだろう。
 「7番」第1楽章など、やや遅いテンポを採り、このオケのたっぷりした音を楽しむかのようだ。音色を美しく彫琢することにはさほど興味がないらしいが、内声部を明晰に交錯させ、管弦楽法をいっそう精妙に浮き彫りすることには細心の注意を払っているようである。フレーズの表情づけも、結構細かい。
 これは、「ロザムンデ」序曲の中でも聞かれた特徴である。

 アンコールでは、今日も「フィガロの結婚」序曲が取り上げられたが、これは先日と同じ、大編成のオケを沸騰させたスタイルで、最終個所などは弦楽器群に雪崩のような勢いを持たせた演奏だった。

 メンデルスゾーンの協奏曲での神尾真由子の演奏は不思議な弾き方で、些か納得の行きかねるところがないでもない。冒頭の演奏の不安定さには何か別の理由があったのかもしれないけれども、最初の小節からずっと続いた非常に癖のある音色とフレーズのつくり方は、あまりにも作為的にすぎないだろうか? 
 彼女の演奏は、チャイコフスキー国際コンクール優勝後もかなり数多く聴いて来たが、何かだんだん「物凄く」(?)なって来たような印象を受ける。プロコフィエフや、ショスタコーヴィチや、チャイコフスキーなどの協奏曲を聴いた時には、その強烈な感情移入、癖の強い音色と牙をむくような音楽の構築などがある種の個性を打ち出しているように感じられたが、メンデルスゾーンの協奏曲の場合には、それは少し強引過ぎるのではないか。

 こういうメンデルスゾーンが新鮮で大胆で、伝統破壊的で面白い━━という感じ方もあるだろうが、今の私にはそこまで踏み切れる自信がない。
 ソロ・アンコールでは、シューベルト~エルンスト編の「魔王」を演奏したが、これにもその特徴がいっそう強く現われていた。「Mein Vater! mein Vater!」という子供の絶叫の個所で、今日の彼女の演奏の総決算が成ったようである。
     別稿  音楽の友12月号 演奏会評

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