2017-06

2015・10・25(日)名古屋二期会 中田直宏:オペラ「宗春」

     愛知県芸術劇場大ホール  2時

 麻創けい子の台本、中田直宏の作曲による創作オペラ「宗春」(全3幕)の2日目。矢澤定明指揮名古屋二期会オペラ管弦楽団と合唱団、西川右近の演出、西川文紀の振付。

 「宗春」とはもちろん、8代将軍吉宗と激しく対立した尾張藩7代藩主・徳川宗春のことである(大河ドラマ「吉宗」では中井貴一が演じた役だ)。吉宗の緊縮財政策に反発し、規制緩和による経済振興を主張して、華やかな商業政策を繰り広げた藩主として知られている。昨年が彼の没後250年にあたっていたという。
 名古屋では地元の殿様として大いに人気があるそうで━━プログラムと一緒に配布されたチラシの中に、「徳川宗春公を大河ドラマに」という署名運動の用紙(NPO法人 宗春ロマン隊主宰)が入っていたのには、何となく驚き、感心した次第である。

 登場人物は非常に多いが、今日の主な配役は、宗春を井原義則、側室・春日野をやまもと かよ、義直の亡霊を安田健、家老・織部を小出隆雄、からくり人形師・庄兵衛を灰塚弘、吉宗を塚本仲彦、その隠密「影の者」を小坂井直美、といった人たちだった。

 これは、今年が創立45周年にあたる名古屋二期会が記念公演作品として委嘱したもので、文字通り同二期会が総力を挙げたプロダクションと言えよう。「愛知芸文フェス」の一環でもある。舞台美術(志水良成)もなかなか手の混んだ日本調で、照明(古川靖)と併せて結構立派なつくりだ。

 だが惜しむらくは━━台本と音楽が、極度に冗長過ぎるのである。
 物語の進行のテンポの遅さは、台本のせいもあるだろう。心中する男女の場面に時間を割き過ぎたり、吉宗の言葉をあとで「影の者」にそっくり繰り返させたりするのも、焦点をぼかせ、冗長さを生む一因だ。音楽についても、その「影の者」が苦悩する場面で何度も長い「間」を取る、という手法も緊張感を失わせる。「緩徐で沈潜」した部分は、「急速で昂揚」した部分との対比があってこそ生きるものなのだ・・・・。

 何より、音楽が平板で、歌詞の流れと含めて「ぶつ切れ」になる傾向があり、しかも各幕に音楽的な「山場」がなく、ただ同じような感じで進んで行く構成なのが、冗長さを感じさせる最大の原因ではなかろうか。私の左隣に座っていた熟年の客(エライ人?)が、第2幕が終った時に、「長いな」と、その隣の人と嘆息していた。
 日本の踊りを入れるのはもちろん良いが、オペラ全体の音楽に何ら新鮮味が感じられないのでは、その民族的感覚も、単なる景気づけのレベルに堕ちてしまう。

 その他、吉宗を単なる権力志向の悪役にしてしまっては、宗春の国家的な「崇高な信念」の意味までがぼやけ、ただの気紛れな藩主といった安っぽい存在に堕してしまうではないか━━という感想などもあるのだけれども、・・・・しかし、私ごときがこんなところで何を息巻こうと役に立つまいから、もう止める。でも、名古屋二期会の折角の45周年記念特別企画なのに残念だった、とは思う。

 15分と20分の各休憩を含め、終演は5時20分。演奏時間は正味2時間45分ということになる。

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