2020-07

2015・10・2(金)東京二期会 R・シュトラウス:「ダナエの愛」

      東京文化会館大ホール  6時30分

 新国立劇場開幕公演のワーグナーにぶつけるかのように、二期会がR・シュトラウスの「ダナエの愛」を上演。これが舞台日本初演とのこと。
 近年の東京二期会の上演の中では出色のものではないかと思われる。準・メルクルが東京フィルハーモニー交響楽団を指揮した演奏がすこぶる良く、映画監督の深作健太の演出も、予想をはるかに上回る出来を示していた。

 まず東京フィル。昨日新国立劇場で「ラインの黄金」を演奏したばかりで、4日には両公演がダブるはず。つまり同じオケとはいっても別々のチームだろうし、メンバーの割り振りがどうなっているのかは詳しく知らない。
 だが、こちら「ダナエの愛」の東京フィルは、昨日の「ラインの黄金」のチームに比べると、格段に密度が濃く、量感も充分で、聴き応えがあった。こういう東京フィルなら、文句も言うまい。ただ敢えて言えば、やや硬質な音で、もう少しシュトラウスらしい豊麗な音色が欲しいところではあったが━━。

 準・メルクルの指揮が素晴らしかった。この人、日本のオーケストラを指揮すると、そのオケとの相性もあるのか、かなりムラがあるのだが、やはりオペラを指揮した時は佳い。それにR・シュトラウスの作品を手がけた時も好い。そして、この数年、また彼自身の音楽が上昇線を辿って来ているようでもある。
 今回の「ダナエの愛」でも、前出のように、響きには少し硬さもあったとはいえ、シュトラウス晩年の音楽の芳香をこれだけ再現してくれれば、私にとっては御の字である。特に第2幕以降の、シュトラウス独特の豊満な官能美━━。

 深作健太の演出は、物語の舞台を証券会社に置き換えるとかいった誰やらの演出とは違い、極めてオーソドックスなストレート路線ではあったが、演技も精妙で、過不足のない、安定した舞台をつくり出していた。日本舞台初演としては、絶好のものであったろう。照明の変化で黄金の色をつくり出す場面も成功していた(照明担当は喜多村貴)。ただし稲妻は、ちょっと要領の悪いところもあったが・・・・。

 第3幕では舞台が一転して廃墟となり、「黄金崇拝」から脱却した人間の世界として、貧しくも愛に充たされた生活を享受するダナエとミダスの生活を描くという設定は面白い(舞台美術は松井るみ)。
 ここにやって来たユピテルが、ダナエの心がミダスに移っているのを知り、失意のうちに去って行く場面で、小森輝彦(ユピテル)が見事な後ろ姿の絶望の演技を見せていたのが印象的だった。なお、このユピテルは、大きな黒い帽子をかぶり、槍を携え、その槍で大地を突いて稲妻を閃かせるという具合で、さながら「指環」のさすらい人ヴォータンのパロディといった感。

 歌手陣は、ダブルキャストの初日・3日目組だ。
 ダナエ役の林正子は、特に第1幕では絶叫し過ぎの感があったものの、この役のパートの声楽的負荷からすれば、全体によく頑張ってくれたと申し上げたい。ユピテル役の小森輝彦は、最初の登場場面では何故か彼らしくない不安定な立ち上がりだったが、尻上がりにいつもの巧みな滋味を出し、存在感も充分。
 ミダス王の福井敬の張りのある情熱的な歌唱はいつに変わらず、その声のパワーが常に力感性を保っていることには驚きの念さえ抱かされる。
 他に児玉和弘(メルクール)、村上公太(ポルクス)、平井香織(クサンテ)、山口清子(ゼメレ)、澤村翔子(オイローパ)、磯地美樹(アルクメーネ)、与田朝子(レダ)たちが好演。

 休憩2回を挟み、終演は10時近く。
 これは東京二期会の成功作。再演に堪えるプロダクションである。

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