2017-10

2015・9・15(火)ロイヤル・オペラ ヴェルディ:「マクベス」

     東京文化会館大ホール  3時

 フィリダ・ロイド演出、アントニオ・パッパーノ指揮ロイヤル・オペラハウス管弦楽団&合唱団。サイモン・キーンリイサイド(マクベス)、リュドミラ・モナスティルスカ(マクベス夫人)、ライモンド・アチェト(バンクォー)、テオドール・イリンカイ(マクダフ)、サミュエル・サッカー(マルコム)他。

 演出は02年6月にプレミエされたもの。
 今回の再演監督ダニエル・ドーナーがどの程度プラスマイナス(?)に関わっているのかは定かでないが、登場人物の演技や群衆の動きなど、何処といって大きな問題はないにせよ、必ずしも緊迫感のある舞台とは言い難い。長年再演を重ねているうちにだんだんタガが緩んで来るのはどんなプロダクションにも見られる現象だから、ある程度は仕方がないかもしれない。
 とにかく、全体に、あまり燃えない舞台なのである。

 だが、亡霊や人物が突然出現したり姿を消したりするくだりなど、特に外連を使うわけでもなく、シンプルながら巧みな手法で処理しているあたり、いかにも演劇の舞台といった雰囲気で、これはこれで悪くない。

 魔女たちがマクベスの運命を操るという設定は、先頃のペーター・コンヴィチュニー演出でも見られた手法だが、このロイド演出でも、1人の魔女がバンクォーの息子を逃がしてやったり、あるいは魔女集団がマクベス夫妻に可愛い子供たちのいる温かい家庭生活を夢見させて苦悩させたり、といった光景も現われる。
 凝った演出と言えば言えようが、その反面、バンクォーの亡霊を妙にリアルな姿で出現させるといったピンと来ない手法もあったりして・・・・。
 アンソニー・ワードの舞台美術も比較的シンプルだが、王冠/王位/黄金色系と、犯罪/魔術/暗黒系との対比を鮮やかに出したところは解り易い。

 パッパーノは、個所によってテンポを非常に遅く採り、悲劇性をじっくりと強調して描き出すという指揮だったが、これがオペラ全体を打ち沈んだものにし、部分的に緊迫感を失わせる、という結果を招いたのは否定できまい。

 今回は1865年のパリ改訂版でなく、1847年のフィレンツェ初演版が使われたが━━部分的には折衷版のような個所もあったような気もするのだが、のんびりと聴いていたので、たしかなことは言えない━━プログラム冊子にそれが明確にクレジットされていなかったのは、やはり不親切である。「見どころ聴きどころ」(筆者不明)では、2版の違いというより、まるで演出の所為でカットされたり復活されたりしたかのような記述が為されているが、これでは困る。

 題名役を歌い演じたキーンリイサイドは、ウィーン国立歌劇場で観たマクベス(2009年12月21日、ネミロヴァのパロディ的な酷い演出)よりは的を絞った歌唱と演技で締めていた。だが、線の細さはどこかに影を落としており、この役は本当に難役だということを改めて感じさせてしまう。
 マクベス夫人役のモナスティルスカは、残念ながら、表現力の点で、この複雑怪奇な女性の役にはあまり向いていないようだ━━たとえばプレミエ時のマリア・グレギーナのような歌手が歌い演じてくれれば、もっと鬼気迫る舞台になるはずだが。

 6時終演。

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