2017-06

2015・9・5(土)山田和樹指揮日本フィルハーモニー交響楽団

       サントリーホール  2時

 シーズン幕開きの定期は、正指揮者・山田和樹の指揮。ミヨーの「世界の創造」、ベートーヴェンの「第1交響曲」、イベールの「アルト・サクソフォンと11の楽器のための室内協奏曲」、別宮貞雄の「第1交響曲」(日本フィル・シリーズ作品の再演)という、極めてスリリングな、清新なプログラムでふたを開けた。

 プレトークは後半しか聞けなかったが、マエストロ山田も、随分弁舌爽やかになり、話の持って行き方も鮮やかになった。
 だが鮮やかなのは話だけではない。今日の日本フィルとの演奏を聴くと、山田和樹という指揮者は、本当に「大変な指揮者」になって来たな、という感を受ける。作品に対するアプローチの姿勢も強靭で、自信満々の意気が伝わって来る。正面切った表現も、大胆で実験的な解釈も、自己のやりたいことを明確に主張し、しかもオーケストラをその狙い通りに制御してしまう。

 日本フィル(コンサートマスター 扇谷泰朋)もよくこれに応えている。昨年9月のR・シュトラウスの作品のころからすでに山田と日本フィルは新しいステップを踏み出したと感じられたが、オケの演奏水準の目覚ましい向上もあって、今日のような濃密な演奏に到達できたのだろう。日本フィルは、十数年前までの「暗い」雰囲気を、今や跡形もないまでに吹き飛ばしてしまった。

 特にベートーヴェンの「第1交響曲」。16型の倍管編成という、最近の流行には逆行する手法だが、私は常々、現代のホールと2千人の聴衆を相手の演奏なら、この編成は当然のことだと思っている。
 そして、演奏スタイルも、現代の欧州の指揮者がよくやるタイプのもので、━━これはやはり「誇張」ではなく「強調」と表現すべきかと思うのだが━━第2楽章冒頭の弦をソリに変えたり、第4楽章冒頭のフェルマータを普通の演奏の数倍に引き延ばしたり、そのあとの主題に入るまでの弦の上行個所に手を変え品を変え趣向を凝らしたり、という具合なのだが、それが全く畸形にならず、全体のバランスの中にぴたりと納められているところが、山田和樹の見事な所だろう。

 第2楽章における音色の構築は、木管をはじめ、実に綿密で、秀逸だった。大編成のオケを咆哮躍動させた演奏だったが、この「第1番」が、これほどいい意味での「怪物的」なイメージで聞こえたのも初めての経験だった。

 いっぽう、別宮貞雄の「交響曲第1番」をナマで聴いたのは実に53年ぶり、「日本フィル・シリーズ」における初演以来かもしれない。といってもあの頃は私もこの曲を理解できるほどの感性は持ち合わせていなかった(今だって怪しいものだが)。とにかくその時には、よく解らないながらも、分厚い音の構築ながらも透き通った、いかにも「フランス系」の爽やかな曲だな、というイメージを感じたのを記憶している。が、今日山田和樹の指揮で聴いてみると、まるで後期ロマン派の作品のように濃厚で、しかも激しく沸騰する音楽に聞こえたのには、驚いた。
 もちろんこれは、指揮者の個性にもよるところが大きいだろう。それにしても別宮貞雄という人の音楽が、半世紀を経てこのように異なったイメージで再現されること自体が非常に興味深い現象だ。

 別宮貞雄は周知のようにダリウス・ミヨーに師事し、メシアンに共感した人である。そのミヨーの「世界の創造」を冒頭に持って来て、トリの別宮作品と対を成さしめるというプログラミングの心憎さ。企画担当者は相当な腕利きのクセモノだろう。
 しかも、同じフランス近代のジャック・イベールの協奏曲をも加えた。ここでソリストとして登場し、文字通り颯爽とした演奏を聴かせたのは、サクソフォンの若きスター、上野耕平である。

 若いパワーと「第1番」、それにフランス、といったキーワードが炸裂した今日のコンサート。爽やかで、鮮やかだった。

コメント

佐渡裕さんや飯森範親さんもそうでしたが、若い指揮者をマエストロと呼ぶことは私は賛成できません。小澤さんは、若いころも今も、マエストロなんて呼ばれていましたか。

山田氏の音楽については、悪く言う評も、絶賛する評も見ましたが、大成を期待する指揮者ではあります。若いうちから持ち上げられすぎて、伸びが止まってしまうことがないようにと思います。

ヤマカズの進化

どちらかと言うと、最近の若手或いは中堅の指揮者がよくやる、オケに対して一礼、楽章の間でにっこり笑って一礼という振る舞いが好きではないので(なんで、指揮者がそんな低姿勢なんだ、もっと攻めて行けと思ってしまう古い人間です)、山田さんの姿勢もやや違和感があるのですが、一旦始まると、その優男ぶりとはまったく異次元の世界で攻めて攻めてオケからすばらしい音楽を引き出してくれます。
フランスものは既に安心感を持って聴いていますが、今回のベートーヴェンでは4管編成のオケからなんとも豊かな響きを紡いでくれました。う~ん、こういう音でベートーヴェンを聴きたかったんだよなぁとうれしい気持ちに浸りました。
甘めの評価ながら、今のところ、弱点をあまり感じません。毎回進化を感じます。これからも間違いなく伸びていくと思います。

日本フィル、いいですね!
今日の午後のサントリーホールも、面白そうなプログラムで気になっています。
残念ながら行かれないので、「コンサート日記」を楽しみにしているのですが、東条様、行かれますでしょうか?

ところで、「マエストロ」は、指揮者に対する一般的な敬称です。オーケストラではそう呼ぶことも多いです。要らない説明かもしれませんが、御存知ない方のために・・・。

とはいえ、東条様がご自身のブログで誰をどう呼んでも良いのでは・・・。

「コンサート日記」の音楽雑誌や新聞の評とは一味違ったテイストをいつも楽しみにしています。
これからも、どうぞよろしくお願いします。

マエストロ イタリア語で

新伊和辞典 maestro 師匠、名人、教員、親方、指揮者、巨匠 なにからなにまで入っているようです。

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