2017-06

2015・8・28(金)セイジ・オザワ松本フェスティバル
ファビオ・ルイージ指揮サイトウ・キネン・オーケストラ

      キッセイ文化ホール(長野県松本文化会館)  7時

 その「指揮者に人を得た」時のサイトウ・キネン・オーケストラが如何に良い演奏をするかの例を今夜聴くことができたのは、幸いだった。

 昨年に連続して登場したファビオ・ルイージだったが、彼がこれほどオーケストラから熱っぽい演奏を引き出したのは、今までほとんど聴いたことがなかった。言いかえれば、ルイージにこれほど燃え上がる指揮をさせたオーケストラが他にどのくらいあったろうか、ということになるだろう。
 その意味では、ルイージと、このサイトウ・キネン・オーケストラとは、極めて相性のいい関係になっているように感じられる。

 第1部で演奏されたハイドンの「交響曲第82番《熊》」での歯切れのいいリズム、弾力に富んだ活気のある表情は、とかく重い、少し物々しい音を出す傾向にあるこのオーケストラからは滅多に聴けないものであったろう。
 それにしても、ルイージがこんなにダイナミックに弾む楽しげな音楽をつくるとは予想外だった・・・・全曲最後も鮮やかに決まっていた。

 弦は12型だったが、相変わらず雄弁で、演奏全体をリードしていた。
 高所の2階席で聴いていたわれわれ(視力の悪い?)業者たちは、溌剌としてキュートな表情で弾く女性コンサートマスターが最初は誰だかわからず、「見たことのある人だけど・・・・」などと、とぼけたことを囁き合っていたのだが、それがあの竹澤恭子さんと判るや、「そう言われりゃそうだ、でも今日は少し雰囲気が違うな」とびっくりしたり、彼女もこのオケのコンマスをやるんだ、と改めて感動したりした次第だ。
 第2楽章の最後で、まるで不渡手形がやっと決済されたかのように主題の結びの旋律が初めて現れるあたり(私は好きな個所だが)、ここでは彼女の闊達な身振りが醸し出すイメージが、そのままオーケストラに反映して昂揚をもたらしたかのようにさえ聞こえたのだった。

 後半は、コンサートマスターに大御所の豊嶋泰嗣が、トップサイドに矢部達哉が座っての、マーラーの「交響曲第5番」。
 16型の弦は強靭だったし、トランペットにガボール・タルコヴィ、ホルンにラデク・バボラークらを配した金管群も壮烈なソロを繰り広げる。名手揃いのアンサンブルという特色を、余すところなく出した猛烈な演奏であった。このサイトウ・キネン・オーケストラがこれだけ噴火山の如きエネルギーを轟かせたのは、24年間毎年聴いて来た私の知る限りでは、小澤征爾指揮の「幻想交響曲」を除けば、ただ3年前にハーディングを指揮に迎えた「アルプス交響曲」の演奏あるのみだろう。

 もちろん、大きな音を出していたからいいと言っているのではない。第4楽章の「アダージェット」では、吉野直子のハープを加えた弦の音色は実に瑞々しく、空間的な拡がりも併せ持って、見事な叙情の世界を形づくっていたのである。

 ここでも、ルイージがこれほど「燃える」音楽をつくるとは、予想外であった。相手がサイトウ・キネン・オーケストラであったればこそ、こういう演奏を為し得たのかもしれない。
 彼はオケからその良さを引き出し、オケは指揮者からその良さを引き出した。ルイージに対する聴衆の拍手も、熱狂的なものがあった(まあ、マーラーの「5番」という曲のせいもあるだろうとは思うが)。
 いずれにしてもこの相性の良さは注目される。しかも、2年連続しての客演指揮。もしかしたらルイージは、小澤のあとを引き受ける指揮者の━━その最有力候補となり得るか?

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