2017-08

2015・8・11(火)アルゲリッチ&秋山=広響「平和の夕べ」東京公演

    サントリーホール  7時

 8月5日に広島で聴いたコンサートの東京公演。マルタ・アルゲリッチ、秋山和慶指揮の広島交響楽団、そして朗読者2人。曲目もすべて5日と同じ。
 ただし曲の順序は変更され、第1部に「エグモント」序曲と「世界の調和」、第2部に「ピアノ協奏曲第1番」が置かれた。

 アルゲリッチをトリに持って来たのは、彼女の出番が第1部で終ってしまうと、ヒンデミットを聴かずに帰ってしまう人もいるかもしれないから━━という理由かと思ったらそうでもなく、天皇・皇后両陛下がアルゲリッチを聴きに見えるから━━という理由だったらしい(確かめたわけではない)。
 それにしても、第2部の始まる直前、最近体調不良を伝えられていた皇后陛下が元気に天皇陛下と一緒に2階席に登場されたのだから、ホール中から歓声と拍手が沸き上がったのは無理もないことだろう。

 さて、アルゲリッチの演奏。今回は広島の時と違ってピアノも好調だったせいもあるのか、いっそうしなやかで変幻自在な動きに満ち、のびのびとして豊麗な表情にあふれていたように感じられた。
 最初のうちは、広島での演奏よりかなり穏やかだった。が、第1楽章再現部あたりから俄然、張り詰めた鋭さがみなぎりはじめた。テンポを極度に落して━━文字通り、スコアに指定されている「ラルゴ」にふさわしい━━神秘的なほど沈潜の極みを示した第2楽章は絶品で、これは今夜の演奏の頂点だったといってもいい。
 第3楽章も感興自在、「スケルツァンド」の指定通りだったが、このテンポに秋山和慶が見事にぴたりとつけて、広響ともども、素晴らしい起伏に富んだ演奏を聴かせたのだった。

 こういった要素を兼ね備えたベートーヴェンは、当代、なかなか聴けぬ類いのものであろう。全曲が終ったあとには、アルゲリッチのソロ・アンコールこそなかったけれども、その代り、オケと一緒に第3楽章をもう一度全部演奏してくれるという豪華なアンコールがついた。

 この協奏曲での広響の演奏が、前回よりもさらに柔軟性に富んで見事だったことは特筆されるべきだろう。もちろん「エグモント」も「世界の調和」も、アコースティックの良いこのサントリーホールでは、豊かな音に響いた。チケットが完売になったのがアルゲリッチのおかげだったとしても、秋山と広響の真価が東京の音楽ファンに強く印象づけられた演奏会となったことも確かなのである。

 朗読については前回と同じ。曲の順序が変更になったため、「ホロコースト」から「世界の調和」へ、「鎮魂歌」から「協奏曲」へ、という流れになったが、これは、5日の組み合わせより成功していただろう。それゆえにこそ、チューニングなど入れずに、朗読から切れ目なしに演奏へ移るという形が実現されていればどんなにか感動的だったろうと思うと、残念でならない。
 終演は9時半を回った。
        ⇒別稿 音楽の友10月号演奏会評

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