2017-06

2015・8・3(月)PMFオーケストラ横浜公演

    横浜みなとみらいホール  7時

 ある理由で今回は、芸術監督ワレリー・ゲルギエフの指揮するPMFオーケストラの公演を、4回全部聴くことになっている。プログラムと、コンチェルトのソリストは同一。
 ただしそのディミトリー・マスレエフはソロ・アンコールに、メンデルスゾーン~ラフマニノフ編の「スケルツォ」(「夏の夜の夢」の)と、チャイコフスキーの「トレパークへの誘い」の2曲を弾いた(オケの演奏会で2曲はやりすぎだが、しかしなかなか良い演奏だった)。

 「ウィリアム・テル」序曲は、初日に比べると、演奏にかなり細かいニュアンスが生かされるようになっていた。ただ、相変わらず緻密さと色彩感に不足するのが問題だ。今回は直前にこの曲が加えられたとのことだが、いっそ、ほかの曲を選んだ方がよかったのではないか? ホルンと木管のソロには、やはり不安定さが続く。しかし、冒頭のチェロは、この3日間を通じて、すこぶる優秀であった。

 一方、協奏曲では、オーケストラにもかなりの改善が認められた。マスレエフのソロも、Kitaraでの時よりも明晰に浮き出して響いており、おそらく今日は彼の特徴がはっきりと聴きとれたのではないかと思う。初々しい気負いと自信、鋭利で澄んだ翳りのないピアニズム、直截なエネルギー感などに満たされた演奏が、強く印象に残る。ただ、コンチェルトを弾く時の呼吸のようなものは、これからだろう。響きは軽く、音色も明るいが、これらは楽器とホールのアコースティックにも拠るだろう。明日のサントリーホールと聴き比べてみたい。

 ショスタコーヴィチの「第10交響曲」では、コンサートマスターは、前半2曲と同じ━━つまり初日の前半2曲とも同じ、ケネス・リャオという東洋系アメリカ人の青年が務めていた。ステージ上の挙止がすこぶるコンマスらしくないのは、オケを昂揚させる役割を持つリーダーとしては、疑問がある。しかし、ソロ個所では骨太の力強い音を聴かせて、音楽的には良いものを持っている人のようである。

 キュッヒル不在の「10番」には一抹の不安を抱いていたのだけれど、演奏全体は、初日と比較すれば格段の進歩を遂げていたように思われ、安心した。さすがゲルギエフ、何とか確実に若者たちを引っ張っているようだ。
 金管と木管は力強く、弦も後半2楽章にいたって精緻なアンサンブルをつくり出した。そしてほんの一瞬だが、第3楽章のある個所では、弦の合奏に一種の清涼な艶が生じていて━━それはゲルギエフが、マリインスキー響の若手奏者から引き出す音によく似ていて、ハッとさせられたのだった。

 ただし初日に及ばないところは、オーケストラの音全体に、輝かしい色彩感といったものがほとんど感じられず、地味で淡彩で几帳面で、「アジアのオーケストラ」そのものといったイメージに聞こえた点だろう。これは明らかに、コンサートマスターの違いによるところも大きいはずである。
 まあ、そんなことも含めて、ステージの雰囲気は、昔のPMFオーケストラのアカデミー生たちに比べると、やはり随分おとなしくて、真面目だ。

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://concertdiary.blog118.fc2.com/tb.php/2222-c1e48a59
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | HOME |  »

Since
September 13, 2007

これまでの来訪者数

最近の記事

カテゴリー

全記事表示

全ての記事を表示する

RSSフィード

ブログ内検索

プロフィール

リンク

News   

雑誌 モーストリー・クラシック に連載中
「東条碩夫の音楽巡礼記」