2017-10

2015・6・6(土)ジョナサン・ノット指揮東京交響楽団

   サントリーホール  6時

 R・シュトラウスの「メタモルフォーゼン」と、ブルックナーの「交響曲第7番」(ノーヴァク版)とを組み合わせた定期。
 今日の演奏は、ノットと東京響がこれまで私たちに聴かせて来た数々の快演のうちでも、最も緻密で、精巧なものであった。

 「メタモルフォーゼン」は、明らかにブルックナーのアダージョに呼応する存在として取り上げられたのだろう。
 ベートーヴェン、シェーンベルク、ワーグナー、ブルックナーなどのエコーも響く、ドイツ音楽への挽歌ともいうべきR・シュトラウスのアダージョ━━23の弦楽器が精妙に交錯するこの作品を、ノットは陰鬱な葬送行進曲には仕立てず、明晰かつ詩的に、未来への希望を滲ませるかのような大きな起伏をもたせて指揮して行った。
 大谷康子をコンサートマスターとする東京響の弦が、実に美しい。この曲をこれほど「気持よく」聴けたのは、久しぶりのことである。

 ブルックナーの「7番」もまた、スコアに書かれている音符を、一音たりとも疎かにしない演奏だ。これほど精密な演奏の「7番」は、滅多に聴けないものだろう。東京響はかつてスダーンの指揮で「完璧な7番」を演奏したことがあるが(録音もある)それが受け継がれているのかもしれない。

 しかし、ノットが東京響から引き出した音楽は、スダーンほどには厳格でなく、もう少し伸びやかなもので、しかも音色は明るい。弱音の弦の柔らかい美しさは絶妙だし、ホルンやワーグナー・テューバをはじめ管楽器群も実に丁寧な演奏をしてくれた。内声部が明確にくっきりと浮かび上がり、美しく交錯する。
 遅いテンポ進められた前半の2つの楽章では、あたかも静寂の中にひれ伏し、祈るかのような演奏となっていた。

 かように、ノットの指揮は非常に念入りで精緻なのだが、欲を言えば、この曲の第4楽章に、もっと明確な形式感といったものが導入できていたら━━と思う。もちろんこれは、もともと曲自体に形式性が不足しているからでもあるが・・・・。
 俗な言葉で言えば、たとえばコーダへの追い込みの個所では、「いよいよ今度こそ最後のクライマックスへ━━」と感じさせる構築が欲しかったかな、ということである。同じようなことを繰り返しているうちに、いつの間にか終りに来てしまった・・・・という感じになってしまうと、何か肩透かしの感になるということだ。

 だが、第1楽章の最後といい、ここといい、彼のクレッシェンドは、なかなか巧い。そしてこの第4楽章のコーダには、目覚ましい昂揚感があった。全管弦楽がフォルテ3つで高鳴る最後の9小節も、見事な均衡を示していた━━ちょうど昨年の「千人の交響曲」の最後の個所と同じように。
 ノットと東京響、ますます快調のようである。

コメント

屈指のブル7

今まで聴いたブル7の中でも3本の指に入るほどの実に美しい演奏でした。と言っても、この齢になると何が3本かわからなくなりますが、聴きながら「ああこれってベスト1かも」なんていう満足感に浸りながら聴いてました。弦が限りなく優美に支えているからこそ木管、金管が美しく浮かび上がり、管楽器が随所に光る演奏を見せるから弦の艶やかさが際立ち、とそれぞれが明確に響くのが聞こえてきてストレスフリーの満足感。でも、すべてがくっきり聞こえて来るのに細部の精密さをあまり感じさせず見事にバランスよく聞かせるというのは指揮者の力量なんでしょう、心底ブラヴォーです。日本のオケでこんなにも素晴らしいブルックナー演奏にであるとはなんといい時代になったことかと浮き浮き高揚した気分で霧雨の中を帰りました。
蛇足ながら、おっしゃるように1曲目も、「もう帰っていいかも」と思うくらいの素晴らしさ。いつかの「ジークフリート牧歌」といいこういう細密画を描かせたら一流の指揮者ですね。

昨日のサントリーホールで聴きました。
ただ一言、「素晴らしかった!」。
これ以上はありません。

ブルックナー7番は、

木管にまさかのストレス。東響に対しては年に1~2回あるかどうかというレア事例。いつになく響きが痩せているように聞こえて、皆さんお疲れ気味なのかなと思ったほど。気になったのはオーボエの音色(鋭角的)とクラの語り口(無色)。金管はトランペット(平板)。元々ブルックナーはしつこくて苦手。うっとりできないとすぐに脱落してしまう軟弱者です。この日は第2楽章後半で長さを感じてしまいました。

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