2019-08

5・30(金)日本フィル第600回(東京)記念定期

   サントリーホール

創立(1956年)以来53年目、第1回定期を開催してから52年目で、ついに600回目の定期公演を迎えた日本フィル。プログラムの付録として、第1回から第600回にいたる東京全定期の指揮者、ソリスト、曲目を掲載したパンフレットも配布された。眺めていると、うたた感ありだ。渡邊曉雄時代、マルケヴィッチやミュンシュの客演、小澤征爾の登場、新日本フィルとの分裂、自主運営オケとしての苦難の道程・・・・。600のうちのどれを聴いたか、どんな演奏会だったか、すべてはっきりと記憶している。

 その600回定期への客演は、ジャンルイジ・ジェルメッティ。曲はブラームスの「ドイツ・レクィエム」であった。日本フィル協会合唱団、菅英三子、河野克典が協演。
 合唱はP席を溢れんばかりに埋めた極超大編成だが、かなり柔らかく歌う。このためいずこからともなく声がそっと沸き起こり、会場全体を包み込んでしまうような効果が生まれていたが、やはりオーケストラをも柔らかいヴェールで覆ってしまうような結果にもなり、すべてが模糊とした音に包まれていたのは、善し悪しでもあった。
 しかし、これはおそらく、ジェルメッティの意図だったのだろう。日本フィルの演奏も合唱に覆われ気味で、明晰さは犠牲になっていた。しかしその代わり、夢の中にいるような飽和的な響きがあって、特に第2楽章後半でのティンパニの音など、リズムというよりは完全なハーモニックスを形成するものとして響いていたところなどは面白い。すべてが不思議なサウンドだったが、温かさを感じさせる。盛り上がりもなかなかのものだ。とはいえ、そういった柔らかい空気に支配されていたため、劇的な流れは割引され、大詰めの安息感が生きてこなかったという印象もある。
  音楽の友8月号(7月18日発売)演奏会評

コメント

私は1960年代からの日フィル定期会員として、この600回記念定期を感慨深く聴きました。本来は土曜日会員ですが、今回は金曜日に振り替えました。座席は土曜の1階15列から2階RC2列へ。こうした合唱付きの作品を聴くときの私の定席です。

ジェルメッティ&日本フィルの公演で最も強い感銘を受けたのは、前回客演のプッチーニ「つばめ」(2003年)。今回のドイツレクイエムは、ジェルメッティにとって1998年定期以来2度目になります。マエストロのの得意曲なのですね。今回の指揮も日本フィルも好いコンディションで素晴らしいドイツレクイエムを聴かせてくれました。

編成は16型。いわゆる対向配置に加えてコントラバスを2台補強し10台、コントラファゴットとオルガンも使用していました。木管楽器の倍管には驚きましたが、若い木管奏者たちの健闘が光りました。この木管アンサンブルは嘗ての黄金時代(広田/平井/伊藤ら)とは違う特性ですが、繊細で清澄な響きを魅力的に奏でていました。コントラファゴットの起用はコンバス増強やオルガン使用と相俟っての、ピラミッドバランス構築の一環として納得の行くものでした。この曲を得意とするジェルメッティの高い見識を感じるこだわりです。

ソロではバリトンの河野克典が素晴らしかった。一曲目からずっと低域と内声部重視の響きが続いてきたところに、あの美しくも深く澄み渡ったバリトンが響いて、もうこの世のものとは思われませんでした。悠揚迫らぬテンポによる滔々たる大河の流れさながらでした。

しかし、いつも日本フィルのアニヴァーサリー演奏会に必ず登場する超巨大編成のアマチュア合唱団、、、、確かに過去においては日本フィルに対する貢献は少なからずあった団体です。しかし私は定期演奏会への起用には長いこと疑問に感じてきました。この曲のキーたる"Selig sind"も判然としないでは、、、。響きの過度の混濁はご免です。オケの響きまでが曖昧模糊とマスクされるシーンも生じるにいたっては、もはや阻害要因と云われても仕方ないでしょう。今後も登場するのであれば、人数を大幅に絞ってでも、クォリティを高めて欲しい。アマチュア合唱団であっても、演奏レヴェルはプロ並みであって欲しいものです。厳しいようですがプロオケの「定期演奏会」なのですから。

ジェルメッティはますます大きく深い音楽を聴かせてくれています。早期の6度目の客演を強く希望します。

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