2017-08

2015・5・29(金)トーマス・ダウスゴー指揮東京都交響楽団

    サントリーホール  7時

 前日オペラシティでサーリアホのオペラが日本初演されたのに続いて、今日は都響がサーリアホの「クラリネット協奏曲」を日本初演。しかも、彼女のプレトークをも織り込んだ。見事な連携プレイというべきか。
 後半には、ニールセンの「交響曲第3番《拡がりの交響曲》」が演奏された。指揮はトーマス・ダウスゴー、コンサートマスターは山本友重。

 サーリアホの「クラリネット協奏曲」は、解説によれば、中世フランスのタペストリー(壁掛け)に描かれている、6点からなる連作「貴婦人と一角獣」にインスピレーションを受けて作曲されたとのこと。
 詳細は省くが、もちろんその絵の中にさまざまな寓意が含まれていることは周知の通り。もっとも、サーリアホ自身はプレトークで、「何か特別なものを描写しようと思って作曲したのではない」と語っていた。

 全曲は切れ目なく演奏される6つの部分から成り、演奏時間も35分以上に及ぶ長大なコンチェルトである。ソロ・クラリネット(カリ・クリーク)は客席の何処とも判らぬ暗闇の中で、あるいは客席やステージのあちこちを彷徨いつつ、時にはオケの楽員に向かって語りかけるように吹く。スポット照明により壁に浮き上がる彼のシルエット(ダンスのような身振りも含む)さえも、一つの演出効果になる。

 そのクラリネット・ソロも、ありとあらゆる音色を駆使し、時にはリードミスのごとき物凄い音響をも発するという超絶技巧的奏法だ。第1部でのソロなど、それが一角獣の鳴き声を模していたと解釈されても不思議はなかろう(サーリアホは、「一角獣の鳴き声はどんな音だったのだろうということも考えた」と語っていた)。

 そのシャープで刺激的な奏法と音色は、オーケストラの叙情的で色彩的な、柔らかく神秘的な音色と激しい対照を為す。それはあたかも、一角獣と貴婦人との対比、動物たちとそれらを支える静的なタペストリーの対比、あるいは━━これが最も適切ではないかと思われるが━━「感性と理性との対立もしくは調和」を象徴しているかのようである。

 そしてオーケストラの楽員もまた、時に起立してソロ・クラリネット奏者の方を向いて応えるように演奏したりする。最後はヴァイオリン奏者たちが演奏しながら暗い客席の中へ散って行く、という演出も採られていた。
 カリ・クリークの見事な演奏もさることながら、ダウスゴーの明晰な指揮、都響の緻密な演奏も素晴らしい。

 後半のニールセンの「3番」では、そのダウスゴー(暗譜で指揮していた)の明晰怜悧な音楽づくりと、都響のブリリアントで精妙な演奏が、さらに最高度に生きた快演となった。都響はまさに絶好調の水準にある(これがいつまでも続くように願わずにはいられない)。
 エピソードのように挟まれる声楽ソロは、半田美和子(ソプラノ)と加耒徹(バリトン)。P席最後方、オルガンの下に位置して歌い、遥か彼方からエコーのように聞こえて来る人間の声━━といった雰囲気を出していた。

 ニールセン・ファンも多かったのだろうが、聴衆は沸きに沸いた。ちょっと尖ったプログラムながら、これだけの客の入りを見せるというのは、最近の都響への評価が高まっているためだろう。

コメント

初めて心から、

都響の演奏を楽しむことができました。個人的にはストレスになりがちなこのオケ特有の「型のようなもの」が、今回は殆ど気になりませんでした。また曲によっては生真面目に傾きすぎてしまう彼らの硬質骨太テイストも、この日のプログラムにはフィットしていたように思います。3年前の新日フィルへの共演が素晴らしかったダウスゴーさんが目当てでしたが、行って良かった。いいコンサートでした。

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