2017-10

2015・5・19(火)アリス=紗良・オット ピアノ・リサイタル

     東京オペラシティ コンサートホール  7時

 妖精のような雰囲気を漂わせる、清楚で美しい容姿のアリス=紗良・オットは、近年の成長著しい人で、日本でも非常に高い人気を誇るピアニストである。
 今回の日本ツアーは、5月11日から25日まで、北は仙台から南は霧島まで計11回のリサイタル。ベートーヴェンのソナタ「テンペスト」、バッハの「幻想曲とフーガ イ短調BWV944」とブゾーニ編の「シャコンヌ」、リストの「愛の夢」第2,3番および「パガニーニ大練習曲」から第1、2、6、4、5、3番。━━プログラムはこの1種類のようだ。

 一部のピアニストがよくやるような、妙に小細工を利かせたり、自分勝手に沈潜しきってみせたりするのとは正反対の、極めて率直な演奏を聴かせてくれるのが好ましい。今回のリサイタルでも、特にバッハとリストの作品では、極めてスケールの大きな演奏を聴かせてくれた。

 私がちょっと戸惑ったのは、「テンペスト」での演奏。美しいが、多分この作品に込められているはずのデモーニッシュな要素がほとんど浮き彫りにされず、その代わりにあたかも妖精の世界のような軽やかさをたたえた幻想的な世界がつくられていたのだ━━もっともこれは私がそう勝手に感じただけかもしれない。

 だが、こういう考え方もあるだろう。ベートーヴェンがこのソナタの内容を人から訊かれて「シェイクスピアの《テンペスト》を読め」と答えたその言葉がかりに本意だとして、その中にはあの作品の妖精的な幻想の世界という意味も含まれていた場合、アリス=紗良が、もしそちらの方のイメージを強く浮き彫りにしてみせたのだとしたら?

 アンコールには、彼女はショパンの「雨だれ」の前奏曲と、グリーグの「小さな妖精 作品71の3」を演奏した。この最後の曲は、なんだか象徴的である━━これも私が勝手に描いたイメージに過ぎないが。

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