2017-07

2015・5・17(日)宮崎国際音楽祭最終日 「トゥーランドット」

   メディキット県民文化センター(宮崎県立芸術劇場)
   アイザックスターンホール  3時

 やっと晴れた。日差しは強いが、南国の空気は爽やかだ。
 4月29日から始まった「第20回宮崎国際音楽祭」も今日が最終日。プッチーニの「トゥーランドット」が演奏会形式で上演された。字幕付原語上演。

 広上淳一が宮崎国際音楽祭管弦楽団(コンサートマスターはこの日も徳永二男)を指揮、題名役トゥーランドット姫をシューイン・リー、韃靼の王子カラフを福井敬、奴隷娘リューを岡田昌子、旧韃靼王ティムールを伊藤純、ピン&パン&ポンを迎肇聡・清水徹太郎・二塚直紀。合唱が浅井隆仁指揮の宮崎国際音楽祭合唱団(宮崎県合唱連盟有志)という顔ぶれである。
 プログラムには、中国皇帝アルトゥム、布告役人、ペルシャ王子のソロ歌手の名がクレジットされていない。皇帝役は合唱指揮者が歌っていたという話も聞いたけれども、出番は少ないとはいえ重要なソロであるだけに、名前は出してあげた方がいいのではないか。

 ともあれ、恐るべき勢いを持った、「炎のトゥーランドット」とでもいうべき大熱演だった。
 スケジュール上の制約から、リハーサル時間は非常に短かったらしいが、オーケストラはなんせ国内各楽団に所属する首席級の奏者が中心であり、オペラ経験は少ないもののアンサンブルづくりの力量は充分の名手たちゆえに、それなりにサマになった演奏を聴かせてくれた。
 もちろん、厳密な意味でのアンサンブル構築、正確緻密な演奏、といった性格のものではない。だが、広上淳一がオーケストラと合唱を情熱的に煽りたて、巧みに盛り上げる。それゆえ演奏に充ち溢れる勢いと熱気たるや、まさにただものではなくなり、それが聴衆をとりこにしてしまうのである。

 歌唱面では、カラフ役の福井敬が例のごとく物凄い馬力で歌手陣全体をリードした。彼の華やかな存在も、この上演を成功させた所以の一つである。
 トゥーランドットのシューイン・リーもよく頑張ったが、「氷のような姫君」たるべきこの役柄にしては、少し声が柔らかいのではないかという気もする。彼女は蝶々夫人役で定評のある人だというから、やはりドラマティック・ソプラノとはいえないだろう。

 むしろリュー役の岡田昌子の方が激しく強い歌い方で、それは極めて意志の強い女性としてはいいかもしれないが、可憐な少女リューのイメージからは些か遠く、こちらがトゥーランドットを歌った方がよかったのではないか、という気もしないではなかった。実は彼女はすでにトウーランドットやアビガイッレを歌い、成功しているということだが、私はその公演は聞き逃している。ピンと張った強靭な声には迫力がある。

 合唱は、ステージの両側と正面のそれぞれバルコン席に配置されていた。メンバーは学生━━高校生と中学生を中心にした編成とのこと。大健闘、よくやったと激賞しておこう。
 個々のパート単独の歌唱では技術的な弱味が露呈するし、プロのオペラ上演のレベルからは遥かに遠いものだが、広上淳一の指揮に応えて管弦楽とともに絶唱するその体当り的な熱演は、なまじプロ合唱団が小奇麗に歌うよりも、よほど聴衆の心を捉えるだろう。
 事実、この合唱と、オーケストラと、ソロ歌手陣が一体となった劇的な場面━━たとえば第2幕でカラフが謎を解き終った場面、第2幕の幕切れ、第3幕の幕切れなどでの演奏には、われ知らずジンとさせられてしまったほどである。

 史上最後のグランドオペラと呼ばれる「トゥーランドット」━━それ自体が並外れてスペクタクルな性格を備えているオペラだ。それがかくのごとく熱気にあふれて演奏された時は、多少の瑕疵を超えて、聴衆を熱狂させる。
 演奏が終った瞬間、客席は文字通りスタンディング・オヴェーションの嵐と化した。そのあと、アンコールとして、第3幕最後の部分がもう一度演奏された。

 この上演が、大規模なオペラの演奏を聴く機会の少ない宮崎のお客さんに喜ばれたことは疑いない。第20回記念の音楽祭の幕切れを飾るものとして、これほどぴったりした光景はあり得ないだろう。それは、この音楽祭を創立以来20年にわたり血のにじむような努力で牽引し、今年勇退した青木賢児総監督を送る賛歌としてもふさわしいものだったのである。

 休憩2回をはさみ、5時40分頃終演。7時50分宮崎空港発のANA(25分遅れ)で帰京。この便で帰京する演奏者たちもかなり多い。福井さんとも、搭乗口でばったり。

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