2017-10

2015・5・10(日)新国立劇場 新制作「椿姫」初日

    新国立劇場オペラパレス  2時

 新国立劇場の今シーズンの新プロダクションの一つ、ヴァンサン・プサール演出によるヴェルディの「椿姫」がプレミエされた。指揮はイヴ・アベル、舞台美術はヴァンサン・ルメール、照明はグイド・レヴィ。

 プサールの演出は、基本的にはストレートな解釈だ。但し第3幕のみは、死に臨んだヴィオレッタの幻想場面として構築されている(よくあるテだが)。
 これを彩るルメールの舞台美術は、シンプルだが、かなり凝ったつくりである。
 第1幕と第2幕で使用されるのは、ピアノと、巨大で豪華なシャンデリアと、舞台下手側を斜めに切る巨大な鏡面だ。この鏡は、たとえば舞台上の現実に対する「幻想」、舞台上の具体的な時代に対する「抽象的な時代」、あるいは主観に対峙する「客観的な視覚」━━などといった、いろいろな解釈を可能にするだろう。この舞台に冷徹な照明が浴びせられ、「煌びやかではあるが翳りのある」世界をつくり出す。

 第3幕ではこうした光景は影を潜め、舞台前面のヴィオレッタとピアノの背後は大きな紗幕で仕切られ、彼女以外の、アンニーナや医師グランヴィルをも含む登場人物はすべて紗幕の向こう側に幻の如く浮かぶにすぎない━━つまりそれらすべてがヴィオレッタの見た幻であることが示される。
 続けて上演されていた第2幕の幕切れで、ヴィオレッタだけが群衆から離れて舞台前面に立ち、その背後に幕が下りるという構成が採られていたが、その瞬間、彼女はすでに、この世の現実から離れた存在になったのだろう。
 第3幕の幕切れ、「息を引き取った」彼女は倒れずに幕の前に立ち、真紅の光を浴びて、再び往時の「誇り高き高級娼婦」の栄光を取り戻す━━。

 プサールの演出は、全体のコンセプトは比較的明確だが、ただし、ヴェルディのスコアが指し示す細微なドラマとしての「演技」については、ほとんど注意を向けていないように思われる。つまり主役たちの演技は、どちらかというと大雑把に近い。
 アルフレード(アントニオ・ポーリ)は、もともと天下泰平な性格の役柄だからともかくとしても、ヴィオレッタ(ベルナルダ・ボブロ)とジョルジョ・ジェルモン(アルフレード・ダザ)には、もっと感情の動きを表現する演技を求めたかった。
 今日の舞台が、美術は映えても、ドラマとしての感銘が薄いものとなっていたのは、そのためである。
 むしろ夜会の客たち(新国立劇場合唱団)の方が、よほど細かい演技をしていたと言えるかもしれない。

 今回のソロ歌手陣は、そうした演技の面だけでなく、歌唱面においても、どうもムラが目立った。ヴィオレッタのボブロは、第1幕での頼りない声と不安定さにはハラハラさせられたが、第2幕以降は何とか持ち直した感。第3幕ではかなり調子を上げて来たから、この分なら上演を追って良くなるのかな、とも思う。

 収穫は、やはりイヴ・アベルの指揮だ。良いテンポで、追い込みや煽りも程よく効果的につくり上げ、ドラマティックな起伏を構築し、オーケストラを引き締めて演奏を盛り上げた。
 東京フィルもこのところ、ピットでのイタリア・オペラの演奏が上向いて来たかな、という気がする。今日のコンサートマスターは渡辺美穂(以前大阪フィルのコンマスを短期間ながら務めた人のはずである)で、いい演奏を聴かせてくれていた。

 第2幕の夜会場面の前に置かれた1回の休憩をはさんで、終演は4時40分頃。
 初日に行ったのは久しぶりである。ホワイエの雰囲気は流石に華やかだった。上品な和服の女性方がえらく多かったのは、よく知らないけれども、何かそちらの会の方たちが大勢来られていたからだとのこと。
 日本女性の和服姿は最高に美しいから、歓迎すべきものではあるが、たった一つ具合の悪いことがある。着物の構造からして、背が椅子の背もたれに着かないので、やや「身を乗り出す」ような姿勢になってしまうこと。そうすると後ろの席の客は・・・・。でもまあ、1階席でのことですから、いいでしょう。

コメント

4日目の19日夜は上出来

19日夜(6回で夜の上演は1回あとは全てマチネーとはシニア向け産業!?)は、主力3人の海外勢は好調でした、テナーは張り響きで朗々と、バリトンの深深とよく通る歌唱、タイトルロールも第三幕は特に良いできで、最後の場面も盛り上げて良かった。
18日のサントリーホールのテナーの不出来、ソプラノのイマイチのストレスを解消してくれました。予算もあり演出は昨今シンプル化していますが、照明の色彩の工夫は進んでいます。3階席からは鏡ばりの床も含めて、舞台と空間の広がりもありは良かった。日本勢の合唱団、と主演者の融合は不足ながら、パジルファル以外を全て観ていますが、ここまで最もいい新国立の出来です。オケの打楽器の座席からビックリして飛び上がるような音はなくなってきているので、以前より集中して聞けました。それにしても18日のバッテイストーニノ音響はNHKホールかMETノサイズでのもの。盛り上げ大きいなりのバランスはいいが。

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