2017-10

2015・5・4(月)軽井沢大賀ホール開館10周年
   チョン・ミョンフンのモーツァルト弾き振り

  軽井沢大賀ホール  3時30分

 GWの軽井沢。若い頃だったらクルマで、渋滞をかいくぐって巧みに裏道を抜けるか、もしくは真夜中にぶっ飛ばして行ったものだが、最近はもう新幹線で駅弁と窓外の景色と居眠りとを堪能しつつ、のんびりと向かう。昔と違い、新幹線は50分~1時間。クルマよりはるかに早い。
 各駅停車の長野行「あさま」で行ったら、乗客の大半が軽井沢駅で降りてしまったのには驚いた。いやもう、大変な人混みである。周辺道路も大渋滞、駅前の18号線でもクルマの列が並んだきり、動かない。まあ、30年前もそうだったけれども。

 本題。駅近くの池の傍に聳える五角形の音楽会場、軽井沢大賀ホールが開館10周年を迎えた。
 毎年GWには、東京フィルやオーケストラ・アンサンブル金沢などが出演して音楽祭が開かれているが、今年4~5月には東京フィルがバッティストーニやチョン・ミョンフンの指揮で計2回の演奏会を行なった他、井上道義指揮オーケストラ・アンサンブル金沢、ウィーン少年合唱団、アリス=紗良・オット、谷村新司らも出る。

 今日は、チョン・ミョンフンが東京フィルと協演して、モーツァルトの「ピアノ協奏曲第23番」を弾き振り、ベートーヴェンの「第7交響曲」を指揮するというプログラムだった。
 チョン・ミョンフン、体調はだいぶ回復したようだが、それでも舞台姿には、どことなく病人っぽい雰囲気がある。左の肩だか腕だかの具合が、未だ悪いと聞く。そんな状態でピアノを弾くのは、おそろしく辛いに違いない。

 彼はまず、独りで出て来てモーツァルトの「きらきら星の主題による変奏曲」を弾き、次に東京フィルとモーツァルトの「ピアノ協奏曲第23番」を演奏した。だがその第1楽章途中でいきなり演奏を中断、「ごめんなさい、そこからもう一度やり直させて下さい」と言って弾き直し(正直なこと!)、全曲が終ったあとで「指がよく動かないのでみっともないことをしてしまいました。お詫びにこれを」と言ってシューマンの「アラベスク」を弾き、さらに「これはミスター・オーガへの小さな愛のメッセージ」と、ベートーヴェンの「エリーゼのために」を弾いた。

 ━━正直言って、今日の彼の演奏からは、かつてモスクワのチャイコフスキー国際コンクール第2位に入賞したピアニスト(注)の面影は、残念ながらほとんど感じられなかった。
 だがとにかく彼は、このホールを寄贈した大賀典雄のために、満員の聴衆のために、渾身の力で一所懸命弾いていたことはたしかである。公演後、プリンスホテル(旧晴山ホテル)で開かれたレセプションで彼は、「今度は体調のいい時に、もう一度ピアノをお聞かせしたい。でも今日は、大賀さんへの愛の手紙である《エリーゼのために》だけは、本当に気持よく弾けました」と挨拶して拍手を浴びていた。

 コンサートの第2部では、彼はベートーヴェンの「交響曲第7番」を指揮した。第1楽章主題提示部の反復をも忠実に行なうという、念入りの演奏である。風格の豊かな、堂々たる「7番」だった。
 この大賀ホールは、大オーケストラには些か無理のあるキャパシティだが、東京フィルも今やこのホールの鳴らし方を心得て来ているのだろう、フォルティッシモにしても、昔と違って無理のない響きを出せるようになっているようだ。フルートに再三雑な演奏が聞かれたのだけは惜しかったが、全体としてはなかなか気持よく聴ける演奏になっていたことは事実である。

(注)チョン・ミョンフンのチャイコフスキー国際コンクール第2位入賞は1974年(優勝はアンドレイ・ガヴリーロフ)。公式日本デビューはピアニスト(日本語表記はミュン・フン・チョン)として、1975年秋のプレヴィン指揮ロンドン響との同行来日だった。その時にはチャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第1番」を弾き、私もその演奏会をFM東京で東京厚生年金会館から生中継したはずだが、番組放送時間とプログラムの短さの問題で招聘元とゴタゴタしていたため、彼のピアノについては、どうもはっきりした記憶がない。
 1978年には読響と協演してサン=サーンスの「ピアノ協奏曲第2番」を弾いた(表記はミュンフム・チョン)。その時の指揮は、初来日のスクロヴァチェフスキだった。のちにスクロヴァチェフスキは、こう語っていた。「彼のピアノには聞き惚れてしまいましたよ。でも、彼が今日のような大マエストロになるとは、当時は彼自身さえ知らなかったのではないでしょうか」(筆者のインタヴュー、読響パンフレット掲載)。

コメント

記事ありがとうございます。聞き取れなかったところや、指揮者の状況などよくわかりました。7番に関しては、強弱やテンポ、一体感や盛り上がりなど個人的にはとても良かったと感じました。ご指摘のように、フルートだけは私も残念さが残りました。オーボエは良かったように思いました。

マエストロのウィーンオペラ座はキャンセルになりました。心配ですね。

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