2017-10

2015・4・18(土)インキネン指揮日本フィル シベリウス・プロ

     横浜みなとみらいホール  6時

 首席客演指揮者ピエタリ・インキネンによるシベリウス。「カレリア」組曲、「ヴァイオリン協奏曲」(ソロは三浦文彰)、組曲「レンミンカイネン」(全曲)━━まさに極め付きのプログラムだ。

 インキネンは昨今、首席指揮者ラザレフ、正指揮者・山田和樹とともに、日本フィルの三頭政治の一角として充実した指揮を聴かせる人である。まして今日は彼の十八番のシベリウス。さぞや素晴らしかろう、と期待120%で聴きに行ったのだが・・・・。
 あろうことか最初の「カレリア」では、冒頭のホルンがグラグラしてアンサンブルの精緻さを欠いたのを手始めに、演奏全体に生気も緊迫感も全く感じられぬ状態が続いて行った。これは今日はダメかなと落胆。インキネン指揮下でさえも昔の日本フィルに逆戻りすることが起こり得るのか、とさえ思ったほどである。

 だが、その不安が完璧に払拭されただけでなく、かつて日本のオケでは聴いたことのないほどの見事なシベリウス演奏が立ち現れたのは、「レンミンカイネン」組曲である。第1曲「レンミンカイネンとサーリの乙女たち」の開始後間もなく、演奏がみるみる密度の濃いものになり、特に後半では、何度か繰り返される息の長いクレッシェンドが、その都度あざやかに決まって行く。

 シベリウスの初期稿の順序に従って第2曲に置かれた「トゥオネラのレンミンカイネン」での、濃い霧の中を彷徨うような不気味な翳りに満ちた音色は流石のものがあった。そして、その霧の彼方から木霊するようなホルンの響きも、今度こそは感動的なものになったのである。
 第3曲に置かれた「トゥオネラの白鳥」も、まさに黄泉の国の暗鬱な河の幻想を想像させる演奏であったろう。

 そして、いっそう舌を巻かされたのは、最後の「レンミンカイネンの帰郷」での演奏だ。この曲を、霧の中を疾走するような、くぐもった音色に響かせるのはなかなか至難の業らしく、ナマのステージでは概して管楽器群がリアルに鳴り過ぎて、やたらエネルギッシュな演奏に陥ってしまうことが多い。
 その意味でも、今日のインキネンと日本フィルの演奏は驚異的な域に達していたといえよう。叙事詩「カレワラ」の一節からイメージされる光景━━レンミンカイネンが霧の中を馬で疾駆、ついに母の待つ故郷に到着するといった模様は、今回のように、管楽器群を前面に押し出さず、ヴェールのかかった音色で押し切ってこそ、劇的に描き出されるのである。

 この「レンミンカイネン」組曲、今回ももちろんすばらしかったが、もう一度やったら、さらに最高度の演奏になるだろう。東京のサントリーホールのアコースティックの中で、東京のシベリウス・ファンのために再演するわけには行かぬものか。
      ⇒別稿 モーストリー・クラシック7月号 公演Reviews

コメント

東京再演歓迎

私は今週の東京定期を金土の二日間とも聴くことになっています。(ブルックナー7番を二日とも同じ席で。)
東条先生ご提案の件、東京でも横浜定期プログラムの再演を是非期待したいと思います。
サントリーホールは、みなとみらいホールよりは客席に関する限りですが、音響条件はマシだと思いますし。いっそのこと杉並なら更に良いでしょう。

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