2017-08

3・28(土)グスターヴォ・ドゥダメル指揮ロサンゼルス・フィルハーモニック

     サントリーホール  6時

 香港2回、上海2回、ソウル2回に続く2回の東京公演━━というアジア・ツァーの一環で、今日はその東京第1日。マーラーの「交響曲第6番《悲劇的》」が演奏された。

 ロザンゼルス・フィルは、前回サロネンの指揮で来日した時から、もう7年も経つ。指揮者の個性を反映して音はガラリと変わり、濃密で濃厚で、艶のある、明るくパワフルなものになった。オーケストラは相変わらず上手いし、音は(アメリカのオーケストラらしく)素晴らしく大きいし、それ自体が一種の痛快きわまる魅力を持っていることはたしかである。

 そして、この楽団を制御するドゥダメルの力量も、鮮やかそのものだ。全管弦楽を豪壮に響かせつつ、各パートの均衡を完璧に近いほどに保ち、音色を混濁させるようなこともない。しかも、たとえば咆哮を続けていた音楽が一瞬おさまり、弱音の中で「次に来たるべきもの」を待つ時の緊張感━━といったものをつくり出す手腕にかけても、卓越したものがある。

 とにかくこれは、豊麗で壮大で、威力的でモルト・エネルジーコな「6番」であった。
 敢えて不満といえば、その段階に留まった演奏だったことであろう。特に第4楽章では、立ち直ろうとしては運命に打ちひしがれる「主人公」の苦悩といったような、マーラーがこの作品に籠めた複雑な感情を聴き手に意識させる音楽からは程遠いものになっていた。つまり、咆哮怒号が延々と続くだけの単調な演奏になるという、この曲の危険な罠に陥った演奏だったのである。

 とはいっても、第1楽章での「イ長調」と「イ短調」の対比をはじめとする、そういう光と翳りの交錯を巧みに描き出すには、ドゥダメルは、やはりまだ若い。今後の成長を待たなくてはならない。彼はとてつもない才能を持っている若手だから、(私は聴けないだろうが)20年後に彼が指揮する「悲劇的」は、きっと素晴らしい演奏になっていることだろう。

 なお今回は、「アンダンテ・モデラート」は第2楽章に、スケルツォは第3楽章に置かれていた。私はこの順序はあまり好きではなく、スケルツォのあとではいつも少々疲労感を覚えてしまうので、そのあとにアンダンテが来た時には一種の安堵と陶酔に浸ることができるのだが、スケルツォのあとただちに濃密極まるフィナーレが来ると、些か辟易せざるを得なくなるのである。いつもと違って妙に疲れたのは、そのせいもあったかもしれない。

 第4楽章でのハンマーの台は恐ろしく巨大な、高さが1・5メートル以上もあろうかという箱状の物体で、その上面は下手側P席最前列(3席)よりも高く、ほぼ2列目客席のすぐ目の前に位置していた。そこで叩かれるハンマー2発は、近くに座っていたお客さんにはすごい衝撃だったろう・・・・。

コメント

 ドゥダメルの指揮は自然体で情感に富み、昨年のVPOとの公演より遥かに良かった。オケとの相性も良いのだろう。
 ロスフィルは2008年のサロネンとの来日公演で、凄いオケとの印象を持ったが、本当に上手い。当時とは金管のメンバーがかなり入れ替わっているが、相変わらずの高水準。日本では燻し銀のSKD、芳醇なVPO等のヨーロッパトーンが賞賛されるが、やはり米国の一流どころのオケが最高と(不謹慎ながら)思ってしまう。大音響でも音が混濁しないし、管楽器はもちろんのこと、弦楽器の表現力にも舌をまいた。
 実演に聴くマラ6の究極の演奏の一つでした。

まさにハンマーの真後ろ、5列目くらいに座っておりました。
奏者が淡々と台を上がってくる姿は、まるで死刑執行人のようで、
それを見ながらまずドキドキ、
そして打ち下ろされると2回とも悶絶し、心臓が跳ね上がっておりました・笑。

フルパワーで鳴っているのに響きがクリアなまま降ってきた。ミューザならともかくサントリーでは初めての体験。音響設計者が彼らのホームと同じであることや、指揮者が優れたバランス感覚の持ち主であることも多少は有利に作用しているのかもしれないけど、結局のところ実践する奏者がいなければあのようなサウンドは生まれてこないはず。

例えばホルンのユニゾンがまるで1人で吹いているかのように聞こえた。音程、音の始末のタイミング、ニュアンスがぴったり合っていた。そういったことを当たり前のようにこなしてしまえるオーケストラは、実はそれほど多くはない。ドゥダメルさんも、スカラよりウィーンフィルより今回の方がずっと良かった。契約延長も納得の2日間でした。またこの組み合わせで来てほしいです。

WienerPhilharmoniker

昨年末、福岡のウィーンフィル、ドゥダメル演奏会聴きました。演目はなんとはげ山の一夜とシェヘラザードでした。どの場面にも個性がなく、お客さんも楽員も熱狂的ではなく、挨拶的な拍手でした。フルパワーの演奏会かもしれませんが、目をつぶれば、ドコのオーケストラかわからない状況に思えました。高額なチケットはボストンポップスのレコードが10枚程度買える値段でした。やはりマーラーやブルックナーを聴きたかった!

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