2017-10

3・27(金)ジェラール・コルステン指揮読売日本交響楽団

   サントリーホール  7時

 先週の「名曲シリーズ」はモーツァルト・プロだったが、こちら定期はモーツァルトの「劇場支配人」序曲」と「ジュピター交響曲」に加え、後半にR・シュトラウスの「英雄の生涯」を置いたプログラムとなった。

 さすがに今日は定期のせいもあってか、ずっといい演奏になった。
 モーツァルトは豊潤な厚い響きで、歯切れよく力に満ちたティンパニが低音域を支え、スケールの大きな、シンフォニックなサウンドを出す。「劇場支配人」では華麗な音色だった弦が、「ジュピター」では一転して落ち着いた色合いに変貌するという描き分けも興味深い。

 コルステンのテンポは安定しており、その意味ではストレート路線ともいえるが、他方デュナミークの変化という面では、非常に細かく設定が為されている。
 「ジュピター」でも、たとえば第1楽章でも、堂々と始まった第1主題が8分音符の細かい畳み込みを挟んで一段落する個所━━第15小節から第23小節にかけて、各小節または2小節ごとに頻々とクレッシェンドを繰り返し、音楽に起伏を与えていく、という具合なのである。
 今どき珍しい、分厚い響きのモーツァルトだが、それが全く鈍重にならないのは、こういう細かい設計がものを言っているからでもあろう。もちろん、音色の清澄さ、リズムの歯切れのよさが効果を発揮しているのも事実である。

 ともあれ、先週のモーツァルト演奏とはガラリ趣を変えた、引き締まった音楽がここに在った。コルステンについても、読響についても、先週の演奏とは全く異なる良い印象を得られたことはうれしい。

 後半の「英雄の生涯」━━これも、(失礼な言い方ながら)予想外にいい演奏だった。すっきりしていて、爽やかで、率直な「英雄の生涯」である。
 この曲においてもテンポは一定していて、たとえば英雄の勝利とともに「英雄の主題」が再現する直前(第629~630小節)でも殊更大きな「矯め」をつくることもない。
 だがリズム感とデュナミークはここでも明確で、冒頭、「英雄の主題」の中で、間を置きながら8分音符で鋭く突っ込んで来る(第6、8,9小節)6本のホルンとコントラバスのアクセントなどは、なかなかの凄味を感じさせるものだった。

 「英雄の伴侶」のソロ・ヴァイオリンが躍動する下で重厚に響くホルン、トロンボーン、バス・テューバ、ファゴット、コントラファゴットなどのハーモニーも見事に均衡が保たれていて、見事である。長原幸太(コンマス)のそのソロ・ヴァイオリンは、巧いけれどもコンチェルトのカデンツァといった趣で、あまり標題的なものにこだわってはいないという印象だったが━━もっともコルステンの指揮するこの曲全体が、あまり標題音楽的な描写を感じさせず、ひたすら颯爽と快走する大管弦楽というイメージだったことはたしかなのだが。

 なお、このコルステンは、エヴァ・メイの旦那だそうだ。また、かつてはカメラータ・ザルツブルクやヨーロッパ室内管弦楽団のコンサートマスターを務めた人でもある。その指揮ぶりは非常にエネルギッシュで、しばしば指揮台を踏み鳴らすというタイプだが、カーテンコールで各首席奏者や各セクションの楽員を立たせて賞賛を受けさせる手順に関しては、どうもあまり要領がよくないようである?

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://concertdiary.blog118.fc2.com/tb.php/2120-dd5c39bc
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | HOME |  »

Since
September 13, 2007

これまでの来訪者数

最近の記事

カテゴリー

全記事表示

全ての記事を表示する

RSSフィード

ブログ内検索

プロフィール

リンク

News   

雑誌 モーストリー・クラシック に連載中
「東条碩夫の音楽巡礼記」