2017-10

3・24(火)井上道義指揮オーケストラ・アンサンブル金沢 東京定期公演

     サントリーホール  7時

 最初にまた例の話を一つ。このオーケストラの公演特有の、開演前のロビーにずらりと立つ、あの黒服軍団がまたもや現れた。スポンサーのVIPを迎える関係者たちだろうが、あちこちに群れを為して並び、入って来る客を一斉にじろじろ見つめるそのさまは、いかにも感じが悪い。不安気に立ち止まってしまうお客さんもいる。東京に来る各地のオケの中で、こんなことをやるのは、今はこの金沢のオケだけである。以前、オケの某大スポンサーの社長の一喝で自粛されたはずだが・・・・今回は別のスポンサーか?

 不愉快な問題はともかくとして、本題に入る。今や健康をすっかり回復したという音楽監督・井上道義の指揮で、演奏された曲は、アルヴォ・ペルトの「フラトレス」、ベートーヴェンの「ピアノ協奏曲第4番」(ソロは仲道郁代)、シューベルトの交響曲「ザ・グレート」だった。

 マエストロ井上の、あの踊るような指揮姿が「ザ・グレート」の第3楽章で復活し、カーテンコールでも得意の「金沢礼賛節」の演説も昔に変わらぬ声で蘇るというわけで、元気になって良かったね、という雰囲気が聴衆の間に拡がる。「金沢でも《ラ・フォル・ジュルネ》をやります。GWですから、ホテルは多分いっぱいで、取れないでしょう。しかし、日帰りもできるようになりましたから(客席笑)。ぜひ金沢へ・・・・」と、相変わらず盛り上げの巧い井上節であった。

 「フラトレス」では、第1コンサートマスターであるおなじみのアビゲイル・ヤングがコンチェルトのようなスタイルでヴァイオリン・ソロを弾いた。打楽器は上手側の袖の奥から響いて来るという音響設定で、これは極めて美しい効果を生んだ。陶酔的な世界である。

 だがユニークだったのは、やはり「ザ・グレート」だ。
 第1楽章での靄のかかったような音づくりの面白さもさることながら、第3楽章のトリオに入った瞬間、不思議に豊麗な音色が聞こえ始めたのには驚いた。というのは、今回はこのトリオ全体を通し、コントラバスを除く弦楽器のすべてが、原譜のアルコ(弓で弾く奏法)でなく、ピッツィカートで演奏していたからである。

 あとで井上氏に確かめたところでは、彼自身が誰かの指揮で聴いたことのあるこの手法を応用してみたのだ、ということだった。
 まことにこれは、面白い響きであった。あのゆったりと揺れ動くような管楽器の旋律を、弦の柔らかいピッツィカートが包み、コントラバスがアルコで低音を支える。実に妙なる玲瓏たる音の効果である。
 今日のライヴは、いずれCDで出るそうだから、ぜひお聴きありたい。是非はともかく、あのベートーヴェンの「第7交響曲」第2楽章の最後がピッツィカートで演奏される時以上の衝撃を感じるはずである。

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