2017-06

3・14(土)ジョナサン・ノット指揮東京交響楽団

   サントリーホール  6時

 ベルクの「抒情組曲」から3つの小品(弦楽合奏版)と、ワーグナーの「パルジファル」抜粋(第1幕前奏曲、第2幕からパルジファルとクンドリの場面、第3幕から「聖金曜日の音楽」)というプログラム。
 これはもう、ノットと東京響の相性の良さが、存分に発揮された演奏であった。

 ベルクでは、グレブ・ニキティンをコンサートマスターとする東京響の弦の音色に清澄で透明な美しさがいっぱいにあふれ、その白々とした冷徹さがむしろ瑞々しい官能性を感じさせていたほどである。

 一方、ワーグナーは━━昨年12月の「ジークフリート牧歌」が意外にのびやかでふくらみのある演奏だったこともあり、ロマン派音楽に対するノットのアプローチのスタイルも判って、これならやってくれそうだと期待していたのだが、それを裏切らぬ見事な演奏となった。
 極めて明快な音色のワーグナーだが、その響きには厚みも重量感も充分に備わっており、音楽が壮大な流れとなって進んで行く。無数のモティーフが交錯するさまが、実に明晰に、鮮やかに浮き彫りにされつつも、無機的で冷たい響きに陥ることは全くない。
 情感たっぷりの神秘的なワーグナーも、それはそれで魅力はあるが、白色の光と翳にいろどられたこのノットのようなワーグナーにも、一種の爽快な良さがあるだろう。

 東京響もこれに応え、すばらしく引き締まった演奏を聴かせてくれた。先日の新国立劇場での「さまよえるオランダ人」では何とも頼りない演奏をしていたこのオケだが、今日は名誉回復をしてさらにおつりが来る、と言ってもいいほどの快演だった。

 なお、第2幕からの場面では、クリスティアン・エルスナー(パルジファル)とアレックス・ペンダ(クンドリ)が協演して好演していた。
 アレックス・ペンダは、男みたいな名前だが、本名はアレクサンドリアナ・ペンダチャンスカという由。ブルガリアはソフィア出身のソプラノで、DVDの「サロメ」などを観てもなかなか鋭い歌唱と演技を披露している。注目株だろう。

 第2幕の中から演奏されたのは、パルジファルが花の乙女たちの中に登場した場面の最後の個所から同幕の終りまでの長い部分である。花の乙女たちの合唱とクリングゾルの声楽パートは割愛されていたが、ワーグナーの音楽は、声楽の一つや二つ抜いてもオーケストラだけで何とかサマになるもので、━━であれば、どうせなら「聖金曜日の音楽」で終らせるのでなく、合唱抜きで全曲最後のパルジファルの「ただ一つの武器」と終曲をもやってもらいたかったという気がしないでもない。
      別稿 音楽の友5月号演奏会評

コメント

東響を好きでいてよかった。目の前にいる彼らが最高のチームだと思える瞬間が何度もあった。パルジファルがまるで抒情組曲のつづき、管弦楽伴奏による歌曲のように聞こえたし、そう聴かせるための息遣いを誰もが意識しているように見えました。全幕のピット仕事の次元では届かない場所に到達していたと思います。

聴き手としても、前半のベルクで受信機能を極限まで高められた状態のまま時代を遡ったことで、風の噂でしか知らなかったワーグナーの「音楽の凄さ」というものを初めて実感することができました。「聖杯」や「救済」といった記号に惑わされることなく音楽だけに集中できるこのスタイルは、ワーグナー嫌いにとっては有難い。この日のようなサウンドで聴けるなら字幕も不要。是非第2弾をお願いしたいところです。

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