2017-09

3・10(火)METライブビューイング オッフェンバック:「ホフマン物語」

    東劇  6時45分

 1月31日MET上演のライヴ。
 2009年にプレミエされたバートレット・シェア(案内役デボラ・ヴォイトが発音していた呼び方に由る)演出のプロダクションで、2010年1月にライブビューイングで上演されたことがある。その時の指揮はジェイムズ・レヴァインだったが、今回はイヴ・アベル。録音で聴く範囲では、アベルの指揮は瑞々しい演奏で、各幕の最後に置かれているクライマックスへの盛り上げ方もすこぶる巧い。

 歌手陣も、当然のことながら大部分入れ替わっている。
 題名役ホフマンは、今回はヴィットーリオ・グリゴーロ。歌唱自体はいいが、明るく陽気な雰囲気のキャラだから、悩める詩人ホフマンという姿はどう見ても浮き上がって来ず、前回上演の際にシェアが語っていた「疎外された男」のイメージからもほど遠いことだけが問題だろう。ただ、そういうコンセプトを考えずに、愛すべき青年ホフマンという役柄だけで観れば、いい舞台であろうと思われる。

 ダッペルトゥットやミラクル博士など4人のいわゆる「悪役」は、今回はトーマス・ハンプソンである。この人もベテランだから、悪くはないが、悪役としての凄味に少々不足、それゆえ舞台をぐっと強く引き締める大黒柱のような存在にならないという恨みがあるだろう。
 言っても詮無いことながら、METの配役表を見ると、3月の上演では個性派ロラン・ナウリが歌うことになっており、彼は演技の巧さではもう図抜けた存在だから、きっと不気味きわまりない悪役を演じてくれたろうに━━。

 ホフマンの恋人たる4人の女性は、まず人形オランピアをエリン・モーリーが予想通り好演。これに対しジュリエッタのクリスティン・ライスは役柄上あまり目立たぬ存在なので分が悪くなるのは致し方ない。
 ステラとアントニアを歌ったのはヒブラ・ゲルズマーワで━━彼女は21年前のチャイコフスキー国際コンクールの際に取材して以降、結構聴く機会があったのだが━━歌の面では最近とみに柔らかさと風格を増したと思われるが、演技が相変わらず、さっぱり上手くなっていない。前回同役を歌ったネトレプコと比べるのは酷としても、それでもアントニア役は何とか歌の力で切り抜けたが、ステラの方は、何をやっているのか判然としない舞台になってしまった。

 結局、前回に続き同じ役を歌ったニクラウス役のケイト・リンジーが、今回はさらに存在感を発揮して、映えていたのではなかろうか。親友ホフマンと表裏一体、時にはその自己破壊的な精神面を具現したような表現━━その最たるものは、第3幕でミラクル博士の片棒を担ぐような形でアントニアに「歌わせてしまう」(=死に追いやってしまう)役割を演じてしまうこと━━を採らせるこの演出のねらいが、今回ははっきりと読み取れたような気がする。

 案内役は、前回と同様、デボラ・ヴォイト。彼女の進行は本当に巧い。体重の話を持ち出したグリゴーロの危険な冗談を変顔で受け流し、彼の果てしなく続く早口のお喋りを巧みに切り上げ、4人の悪役の特徴を説明するハンプソンには「どの役が演技?」(全部あなたの「地」なんじゃないの?)と軽やかに突っ込むというように、・・・・まずは見事な司会者、といえるだろう。
 終映は10時20分頃になった。

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