2017-10

3・4(水)エサ=ペッカ・サロネン指揮フィルハーモニア管弦楽団

    サントリーホール  7時

 ヒラリー・ハーンの弾くブラームスの「ヴァイオリン協奏曲」を中に挟み、前後をシベリウスの「トゥオネラの白鳥」と「交響曲第5番」で固めたプログラム。

 何より、ヒラリー・ハーンのソロが、いつもながら豊かで強靭そのものだ。実に気宇壮大で、凛として逞しく、しかも緻密で精妙なニュアンスを完璧に備えている。
 彼女の弾くブラームス像には、所謂哲人的な、地味で堅実な面影はあまり感じられない。むしろ、明快な口調で語りかける開放的な人物といった趣がある。が、しかしそのきりりと引き締まった演奏の表情は、強烈な自信と深い滋味を兼ね備えたこの作曲家の精神を浮き彫りにしているだろう。

 彼女のその演奏に呼応して、サロネンとフィルハーモニア管が躍動する。どちらかというと重心の低くない音づくりだが、力があって美しい。
 第3楽章の第90小節前後の個所を、サロネンは、ホルンを先頭に、管とティンパニを咆哮させて猛烈に煽った。さすが、やってくれたわ、という感。かつてここを煽った演奏では、いずれも録音だが、ケネディと協演したテンシュテットの指揮と、ハイフェッツと協演したライナーの指揮が印象深かった。今日の演奏は、そこまでは行っていなかったものの、漲る気魄が充分で、これも面白かった。

 シベリウスの方は、サロネンのお国ものだから、悪いはずはない。「トゥオネラの白鳥」の重く沈潜した陰鬱な響きと気分には、さすがのものがあった。
 「第5交響曲」ももちろん同様である。ただ、ちょっと持って回った演奏という感がなくもない。いつも聴き慣れたこの曲が、常よりも重厚長大な交響曲に感じられたのだが・・・・。

 このサロネンの「5番」における指揮で、たった一つ納得が行かなかったのは、第1楽章コーダの【Q】以降、プレストに入ってからの個所だ。
 サロネンはホルンを強奏させ、トランペットの動きを全合奏の中に埋没させてしまったので、専らホルンの同一音型の反復ばかりが浮き立つ結果になってしまい、トランペットによる主題のモティーフが全く聞き取れなくなってしまっていたのである。ここは、サロネンがこの楽章の主題の扱いをどのように解釈していたのか、尋ねてみたいところだ。

 この3カ月ほどの間に、このシベリウスの「5番」のナマを、東京都響と札響の演奏と併せ、これで3回聴く機会があったわけだが、フィルハーモニア管弦楽団は、シャクだけれども、やはり上手い。音量もスケールも大きいし、響きも豊かで、空間的な拡がりを充分に備えている。
 もっとも、緻密さと凝縮力においては、日本のこの二つのオーケストラだって、決して引けは取らないだろうが。

 オーケストラのアンコールは、予想通りのシベリウスの「悲しきワルツ」。またこれか、という感もあったが、演奏自体はすてきだった。なお、ハーンのアンコールは、バッハの「無伴奏パルティータ第3番」の「ジーグ」。時間さえ許せば、このまま全曲を聴いてもいいな、と思わせたほど。

コメント

フィルハーモニアは硬質

作曲家が、つい使ってしまうようなフレーズに、自然に思いがこもってしまうようなことを、私は、作曲家の「癖」と、呼んでいる。ブラームスは、この「癖」が、完全に削ぎ落とされた。ある意味完璧かも知れないが、私には、座りが悪かった。
シベリウスの「癖」は、生き残っていたが、少し考え過ぎの演奏かも。クライマックスに没入出来ない。「作曲家の生きた環境など気にするな。楽譜に全て書いてあるのだから。」と、プログラムのサロネン語録にあったが、ウーン、そうですか。

協奏曲のこと

大好きなコンビ+苦手なソリストという事例。複数プログラムを聴くための選択肢が今回はきわめて少なかったので、6日の他にもう1日となるとこの日にせざるを得なかった。彼女を苦手とする理由は以下2点。①終始何かに貼りついたような歌い回し②オケとの合流で飛び乗ってほしいところで必ずブレーキをかけられてしまうところ。

音程の良さと音色の美しさだけでは自分は心地よく過ごせない体質なのだということを、彼女の演奏を聴かされる度に痛感する。今回もその印象に変化はなかったものの、2010年のチャイコフスキーの時ほどのストレスは感じませんでした。極力オーケストラ側に耳の照準を合わせるようにしていたこともあるけど、あのスタイリッシュでフレキシブルなサウンドだけで、ご飯3杯いけてしまった気分。ホルン+木管セクションの準ソリスト的なパフォーマンスも楽しかったです。最終的にはブラームスのおかげということになるのかも。

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://concertdiary.blog118.fc2.com/tb.php/2103-0e87cd6a
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | HOME |  »

Since
September 13, 2007

これまでの来訪者数

最近の記事

カテゴリー

全記事表示

全ての記事を表示する

RSSフィード

ブログ内検索

プロフィール

リンク

News   

雑誌 モーストリー・クラシック に連載中
「東条碩夫の音楽巡礼記」