2017-08

3・3(火)川瀬賢太郎指揮神奈川フィルハーモニー管弦楽団

   神奈川県民ホール  7時

 今日はチャイコフスキー・プロで、前半に郷古廉をソリストに迎えた「ヴァイオリン協奏曲」、後半に「交響曲第5番」。

 神奈川フィルの音が、きれいになったように思う。常任指揮者・川瀬賢太郎の個性も反映しているのだろう。特に、ゆっくりした個所での弦の響きには、彼がたとえば細川俊夫の作品を指揮した時につくった、あの澄んだ抒情的な音色が聴かれたような気がした。

 川瀬の最近の指揮ぶりは、文字通りの大奮戦だ。振り上げる腕は天を衝き、連続して数回も跳躍し、指揮台狭しと暴れ回る。まさに全身全霊を込めてオーケストラに彼自身の音楽を伝え、それを具現するための闘いを繰り広げているかのよう。彼のこういう指揮姿は、以前はほとんど見たことはなかった。若いうちは、このくらいのオーバー・アクションも好いだろう。

 たとえば、交響曲の第1楽章でのフォルテ3つの個所━━198~199小節、202~203小節、および455~456小節、459~460小節におけるたたきつけるリズム感の激しさは驚くほどだし、第4楽章主部での突進する凄まじいエネルギー感は、若手指揮者らしい体当り的な気魄を物語る。その一方、協奏曲での第1楽章冒頭や第2楽章での瑞々しい清らかな叙情感も見事だ。

 アンコールで演奏したチャイコフスキーの「第4交響曲」第3楽章の最後の音を茶目っ気たっぷりに振り終えるなどというステージ姿も、以前の彼には見られなかったものだろう。彼は、神奈川フィルを指揮する時には、思い切り自由に、愉しんで振っているように見える━━内情はどうか知らないけれども、とにかく客席からは、そう見える。
 これでオーケストラ側の方でも、管の不安定さが是正され、弦のトゥッティを含めた全体のアンサンブルが整えられる時が来れば問題ないのだが、そこに行き着くまでには、だれかオケを厳しくしごき上げるトレーナー的指揮者が必要だろう。特別客演指揮者・小泉和裕、首席客演指揮者サッシャ・ゲッツェルとの3頭体制で、これがどう改善されるか待ちたい。

 なおヴァイオリン・ソロを弾いた郷古廉━━この若手も凄い。技術もさることながら、演奏に満ちる緊迫感と力、瑞々しくしなやかな躍動感、そして何より、良い曲だなと思わせる音楽性が素晴らしい。川瀬指揮する神奈川フィルもこれに呼応して、音量はやや不足気味だが、美しいコンチェルトを聴かせてくれた。全曲最後での、川瀬の勢いあふれる「振り終え姿」も決まっていた。

コメント

ミューザ公演にて

私は3月1日のミューザ公演を聴きました。プログラム等はすべて同じです。座席は2CA6列で、この辺りが日本のオケを聴くには最良のポジションでしょう。

このところ川瀬の指揮をなるべく多く聴くようにしています。読売日響との「三大交響曲」、新日本フィル、東京音大シンフォニーオケとの見事な「英雄の生涯」とシューベルト「第2番」など。そして今回の神奈川フィル。次には読売日響の大手町ホール公演(モーツアルト・プロ)が続きます。

ミューザのあの優れた音響では、指揮とオケのすべてが洗いざらい出てしまうので、現在の神奈川フィルにとっても、聴く側にとってもやや辛いものがありました。それでも川瀬の作品に対する真っ向勝負の姿勢には好感を持ちました。ただ、音楽の持つ豊かさや作品の魅力をもっと掘り下げた演奏になるのには、現在の神奈川フィルでは限界も感じました。それはちょうどこの翌日に同じミューザで聴いたソヒエフ指揮トゥールーズとの差が示していた通りです。私がソヒエフの才能の只ならぬ凄さを知ったのがN響B定期での、同じチャイコフスキー「第5番」だったこともその思いを一層強くさせてしまったかも知れません。

川瀬賢太郎はまだまだ若いけれど、どんな音楽作品に対しても真摯な姿勢で当たり、誤魔化しのないまっとうな才能と資質の持ち主です。チャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲」でも、ソリストの非力さは兎も角として、オケ部分の彫りの深い表現委は納得しました。願わくは今後、もっともっと優れたオケとの共演を重ねていって欲しいものです。幸い読売日響が「三大交響曲」を通して川瀬賢太郎を高く評価してくれているのが救いです。下野竜也がそうであったように。

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