2019-05

5・19(月)下野竜也指揮 読売日本交響楽団

  サントリーホール

 山根明季子の「ヒトガタ」、コリリアーノの「ザ・マンハイム・ロケット」「ハーメルンの笛吹き幻想曲」という作品を並べたプログラムは、定期とはいえ、いかにも大胆で、意欲的である。

 下野は曲間のトークで、「ゲテモノ担当のシモノといたしましては」と聴衆を笑わせた。アルブレヒトが去ったあと、読響の現代音楽初演路線を背負って立つ若い正指揮者、下野の奮闘を讃えたい。こういうレパートリーだと、客席に隙間が多くなるのが残念だし、心配にもなるが、読響には御大スクロヴァチェフスキや嵐のラザレフなど、客寄せレパートリー担当の指揮者たちもいることだから、そのへんのバランスはなんとかなるのだろう。

 山根の作品は読響の委嘱曲。正直言って私にはさほどの感興を呼ばなかったが、異なるテンポが入り乱れる部分の曲想に、些かのスリルを覚えたのは事実だ。あとで作曲者が登場したトークで、「それぞれの時間」というキーワードを聞いて、なるほどと感心したものである。
 一方、コリリアーノの「ザ・マンハイム・ロケット」は少々漫画チックな曲で、ロケットに乗ったイメージで味わう「時空の旅・音楽史の旅」というべきか、いろいろな名曲の断片が見え隠れ。ドタバタと上がって行ったり墜落したりするロケットだが、一瞬笑える。
 
 最後の「ハーメルンの笛吹き」では、王子様のような派手な衣装を着て、曲の途中から舞台に入って来た瀬尾和紀のフルート・ソロが冴え渡った。
 大詰めでは、「子供たちも笛を吹き、太鼓をたたきながら、笛吹きのあとについて、どこかへ行ってしまいました・・・・」という雰囲気で瀬尾と少年少女鼓笛隊が客席後方へ姿を消して行くと、舞台の照明が次第に落ち、オーケストラの演奏も暗くなって行く。さっきまで華やかな衣装の笛吹きがいた所には、もう誰もいない・・・・といった寂寥感もいい。

 読響は、打楽器陣を筆頭に、輝かしい演奏を聴かせた。しかし、それにもまして冒頭に演奏された「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲における音づくりの見事さを称賛したい。曲中にその冒頭の和音が引用される「ザ・マンハイム・ロケット」への伏線となるものだが、この演奏がすこぶる良かった。羽毛のような響きの弦に、くぐもった音色の管が調和し、「柔らかく陰翳の濃いハ長調」をつくる。このユニークな音色を実現した下野と読響の呼吸はすばらしい。

 このところ、わが国のオーケストラの卓越した演奏会を3つ、立て続けに聴いたことになった。そう、日本のオーケストラもこんなに見事な演奏をしているのだということを、もっと多くの人たちに知ってもらいたい!

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