2017-08

1・27(火)ワシーリー・ペトレンコ指揮ロイヤル・リヴァプール・フィル

    サントリーホール  7時

 ワシーリー・ペトレンコは、昨年3月にはオスロ・フィルと来日していた。が、今回はその時と違い、ロシア20世紀の作品のみを携えて来ている。これはV・ペトレンコの本領を知るには絶好のプログラムだろう。

 いつものように骨太な音の、しかも時には無造作に聞こえるほどの荒々しい音の構築だが、それがツボにはまると実にダイナミックで痛快無類の音楽になる。ストラヴィンスキーの「火の鳥」組曲では「魔王カスチェイの踊り」で豪壮な迫力を全開、また「春の祭典」では速めのテンポで大音響のエネルギーを噴出させた。

 この2曲の間に演奏したプロコフィエフの「ピアノ協奏曲第3番」(ソロは辻井伸行)でもV・ペトレンコは遠慮せずにオーケストラを咆哮させる。しかし、この曲のオーケストラ・パートが、こんなにも雄弁多彩で荒々しい━━若きプロコフィエフの奔放な情熱が暴れ回るように面白く聞こえたのは、滅多にないことであった。

 感心したのは、これだけラフ・ファイター的な音楽づくりだったのにもかかわらず、各楽器のパートが荒々しい躍動の裡にも明晰に浮かび上がり、オーケストラの音がほとんど混濁していなかったことだ。
 ロイヤル・リヴァプール・フィルという楽団は、技術的にはいわば日本の在京オケ群の第5番目あたりに相当する力量かと思われるが、たたきつけるエネルギーの強さ、明確な音色のコントラストなどに関しては、さすがのものを感じさせるだろう。V・ペトレンコとの相性も━━その演奏の特徴への好みは別として━━なかなか良いようである。

 最後のアンコールは、エルガーの「朝の歌」、リムスキー=コルサコフの「道化師の踊り」、ブラームスの「ハンガリー舞曲第1番」の3曲。V・ペトレンコはその都度聴衆の方を向き、手を胸の前で動かし、「もう1曲やる? 聴きたい? ホント?」というようなジェスチュアを笑顔で繰り返す、という愛嬌ぶりであった。

 辻井伸行のピアノは、このアクの強いV・ペトレンコの指揮と比較してしまうと、ずいぶん清澄で透明で、日本的な美しい叙情のしみとおった演奏に聞こえる。2階席センターの7列目あたりで聴くと、やはりオーケストラの怒号の中に隠れてしまうことも多い。といっても、そもそもコンチェルトでこんなに大きな音を出す指揮者は稀なのだが━━それなりの面白さがあることは前に述べたとおりだが。
 それゆえ辻井の本領は、むしろアンコールで弾いたラフマニノフの「前奏曲作品32の12」と、「パガニーニの主題による狂詩曲」の第18変奏を辻井自身が編曲したという小品(この編曲、最後の方をもう一工夫していただきたい)に、より強く顕われていたといっていいだろう。

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