2017-08

1・18(日)北海道二期会50周年記念「アイーダ」

    札幌コンサートホールKitara  2時

 雪害を警戒して前夜に札幌へ入るつもりだったが、北海道はすでに猛吹雪とかで、夜の便は軒並み欠航、大混乱。私が乗る予定だったANA079便(夜8時発)だけは、1時間遅れで出発する、と頑張っていたものの、夜9時直前になって、結局欠航を決めた。乗客一同、粛々と出発カウンターまで歩き、手続きのため延々長蛇の列をつくる。
 私の方は、いち早く今日(18日)朝8時発のANAを予約し直す。一夜明けて、幸いにもこのほうは飛んでくれた。とはいえ、新千歳空港上空で旋回しつつ待機すること約45分。到着ロビーに着けたのは10時55分頃。札幌行のJR「エアポート」も大幅に間引き運転中だったが、何とか11時08分の列車に飛び乗る。かくて正午近く、やっと札幌市内に到着、という有様であった。

 昨年秋、関西二期会が創立50周年を「ドン・カルロ」上演で祝った。今回は北海道二期会が、50周年記念を「アイーダ」で祝う。
 ただし札幌には、グランドオペラを上演できるような劇場が未だない。それゆえKitaraでの、その大きな空間を活用してのセミ・ステージ形式上演になる。字幕付き原語上演である。

 北海道二期会は、1964年に「二期会札幌分室」(通称「札幌二期会」)として発足、67年からの「二期会北海道支部」を経て、1984年から現在の名称としている。最初の上演作品は「フィガロの結婚」で、67年5月18日、札幌市民会館でのことだった由。
 以降、「魔笛」や「ドン・ジョヴァンニ」「カルメン」「ラ・ボエーム」「愛の妙薬」「ヘンゼルとグレーテル」「霊媒」「カルメル派修道女の対話」などといったレパートリーに取り組み、「修善寺物語」や「夕鶴」「人買太郎兵衛」「河童譚」などの邦人作品にも力を入れて来た。上演リストを見ただけでも、道二期会が、会場の制約と団体の規模とを勘案しつつ、それに即した意欲的な活動を行なって来ていることが解る。

 Kitaraを会場にしてのセミ・ステージ形式上演━━サントリーホールと同様、「ホールオペラ」という呼び方が使われている━━としては、道二期会は、これまでにも「トゥーランドット」「修道女アンジェリカ&カヴァレリア・ルスティカーナ」「カルメン」「ラ・ボエーム」という順で取り上げて来た。そして今回はついに、同団体初のヴェルディものとして、大掛かりなグランドオペラ「アイーダ」に挑んだ━━というわけである。

 とにかくこれは、現在の道二期会の総力を挙げた、驚くべき意欲作といえるだろう。
 演出は、ホールオペラには手慣れた手腕を示す岩田達宗が担当。ワインヤード型の宏大なKitaraを巧みに活用して効果をあげた。
 オーケストラはステージ上に配置され、歌手たちが演技を行なう舞台はオーケストラの後方を主に、一部はステージ最前方に設置される。合唱はすべてP席に配置され、黒服で演技無し、つまり「コロス」のような役割に徹している。

 歌手陣はすべて「いわゆる《アイーダ》風の」衣装・扮装付で、小道具・持道具の類も最小限は用意されている。凱旋の場面ではさすがに「兵士の大行進」はないけれども、若干の兵士や捕虜も登場させ、1階客席をも活用して、それらしきイメージを巧みにつくり出していた。照明は少々手際のよくないところもあったが、なにしろたった1回の会場練習、たった1回の本番なのだから、多くを注文しても酷だろうと思う。

 オーケストラは、大平まゆみをコンサートマスターとする札幌交響楽団で、この上演の音楽的水準を高めた最大の功績者と言っても過言ではないだろう。
 指揮は、ベテランの牧村邦彦。歌手たちを巧く支える手腕には定評があるが、欲を言えばドラマの変転に応じた音楽のテンポや心理的な表現、色彩などにもっと多彩な変化が欲しいところ。些か長すぎる感のあるゲネラル・パウゼ(総休止)を含め、時に緊迫度が希薄になったり、一つの場面から次の場面に移るあたりの音楽の変化が単調に聞こえたりする傾向がなくもなかった。

 歌手陣は、ほとんど全部が北海道勢だとかいう話も聞いたが、よく健闘していた。
 将軍ラダメスを歌った岡崎正治は、声も風格も充分であり、エジプト軍の英雄としての役柄を見事に表現していた。
 エチオピア王女アイーダ役の菅原利美は体当り的な歌唱と演技で、声にも明るさと輝かしさがあり、これからの躍進が期待されるだろう。

 エジプト王女アムネリスを歌った荊木成子は、前半では声が伸びずに不安を感じさせたが、後半で盛り返した。第4幕のラダメスとの応酬の場面では息づまる迫力を聴かせたし(ここは牧村の指揮も良かった)、これだけの歌唱が出来る人なら、オペラの舞台に慣れさえすれば、良い性格派メゾ・ソプラノとして活躍できるはずである。
 エチオピア王アモナズロ役の岡本敦司も、力強い存在感をあふれさせた歌唱と演技で印象に残る。

 その他、エジプト王に原慎一郎、祭司長ランフィスに内田智一、巫女に浅原富希子、使者に江川佳郎。中にはイタリア語の発音が非常にあいまいに聞こえる人もおり、このあたりは重要な問題なので、研鑽を積まれることを期待する。もっとも、前半よりは後半で調子を上げて行っていた内田智一のような人もいるから、要するに経験、だろう。
 もう3年か4年経つと、札幌にもオペラをちゃんと上演できる劇場が出来るとのことだし、そのバランスのいい音響の会場で歌い続けることができれば、今夜の歌手陣ももっと腕をあげられることだろう。

 また、第1幕と第2幕には、札幌舞踊会によるバレエも入った━━これは「エジプト風の衣装」ではなかったようである。綺麗な踊りだったが、スペースの関係で、ちょっと中途半端なものに感じられたのが惜しい。
 合唱は札幌アカデミー合唱団、ホクレングリーンコール、北海道二期会メモリアルコール。安定して力感も充分な歌唱であった。
 第2幕の「凱旋の場面」でのバンダには、陸上自衛隊北部方面音楽隊のメンバーが20人以上出演していたが、これがなかなかの実力で、お見事。「アイーダ・トランペット」のパートでは少々ミスも出たが、わが国のこれまでの上演の中では、あのくらいで済んでいれば御の字だろう。

 なお、舞台美術デザインは福田恭一、照明デザインは宮崎貴弘。字幕は岩田達宗自ら担当、解りやすかったが、ちょっと心配だったのは、字が小さすぎたのではないか、ということ。

 休憩1回を挟み、終演は5時少し過ぎ。雪の札幌を飾った北海道二期会の力作であった。
        ⇒別稿 北海道新聞

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