2017-08

12・16(火)METライブビューイング 「カルメン」

  東劇  6時45分

 去る11月1日上演のライヴ映像。
 リチャード・エア演出、パブロ・エラス=カサド指揮、アニータ・ラチヴェリシュヴィリ(カルメン)、アレクサンドロス・アントネンコ(ドン・ホセ)、イルダール・アブドラザコフ(エスカミーリョ)、アニータ・ハーティグ(ミカエラ)ほかの出演。

 これは昨年2月、現地で新演出の「パルジファル」と「リゴレット」を観た時に、「ついでに」観たプロダクションだった。
 装置(ロブ・ハウェル)は大掛かりだが、特に第4幕の「闘牛士の入場」場面など、狭いスペースに人物をぎっしり詰め込んでいたので、舞台全体の景観としては、METにしては比較的地味な舞台に見えた。それゆえ、さほど印象に残っていなかったプロダクションだったのである。
 それにあの時は━━テレビ中継も入っていなかったし、上演そのものが一種のルーティン公演みたいな雰囲気だったので、舞台に緊張感が欠けていたのかもしれない。

 ただし今回、クローズアップの多い映像で観てみると、だいぶ印象は異なる。つまりMETの巨大な空間との比較を意識せずに済み、舞台の重要なポイントだけが観られるので、その点では無難に愉しめると言えるかもしれない。
 舞台の動きも演奏も、昨年よりもずっと引き締まっているように感じられるのは、ライブビューイングの中継が入っているため皆が張り切っていたためでもあろう。

 主役4人のうち、題名役のラチヴェリシュヴィリだけは前回に続く出演で、今回は演技も歌唱もずっとこなれていた。ただし彼女のカルメンは、いわゆる奔放な女とか、妖婦的とかいうイメージは薄く、むしろ温かい雰囲気がある。それは、もしかしたらエアの演出に基づくものかもしれない。

 今回面白かったのは、アニータ・ハーティグのミカエラだ。第3幕、狂乱状態になったホセを故郷の街へ連れ戻すべく、彼女が「もう一言だけ!これが最後だから」と叫ぶくだりを、ハーティグは、普通歌われる哀願調でなく、びっくりするほどドラマティックな声で表現した。しかも、それまでおどおどとしていた様子をかなぐり捨て、中央の一段高い岩の上へ仁王立ちになって歌ったのである。
 弱々しく恐怖に慄いていた女性が、突然その場すべてを支配する強い存在と化す。この一言で、ホセやカルメンだけでなく、ざわめいていたジプシーたちまでが、ぴたりと動きを止めてしまう。それが演出家の注文によるものか、ハーティグ独自の解釈か、指揮者の意向によるものかは判らないけれど、なるほど、ミカエラの扱いについて、こういう解釈もあったのかと改めて感心させられた次第であった。ほんの一瞬に過ぎなかったが、これは、「タンホイザー」第2幕後半でのエリーザベトに共通する存在感といえようか。

 休憩10分1回を含み、上映終了は10時少し過ぎ。

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