2019-05

11・17(月)METライブビューイング 「フィガロの結婚」

    東劇  6時45分

 10月18日MET上演の映像。
 リチャード・エア演出による今シーズンの新プロダクションで、ジェイムズ・レヴァインが指揮、イルダール・アブドラザコフ(フィガロ)、マルリス・ペーターゼン(スザンナ)、ペーター・マッテイ(アルマヴィーヴァ伯爵)、アマンダ・マジェスキ(伯爵夫人)、イザベル・レナード(ケルビーノ)、イン・ファン(バルバリーナ)他の出演。

 映像で観る限り、今回の舞台は全く隙のない出来と言っても言い過ぎではなかろう。
 エアは、ドラマの舞台を1930年代に移したというが、そのこと自体は今日ではさほど重要な問題ではない。演出も極めてストレートな範疇に納まるもので、概してト書き通りの舞台だし、アリアの個所では歌手は客席を向いて歌う。
 しかし、むしろ重要なのは、歌手たち全員の演技の細かさ、巧さだ。

 アリアの個所でさえ、歌手は素晴らしく精妙な表情を見せている。何より舌を巻かされるのは、登場人物たちが大勢で絡み合う場面での、全員の呼吸の合った細密、完璧な応酬ぶりである。
 エアは「そこで右へ動いて、今度は左へ動いて・・・・などと指示を出すようなタイプの人じゃない、素晴らしい演出家」(イザベル・レナード)だそうだが、しかしいかに彼が細かく指示しようとも、やはり歌手たち自身がそれぞれ自分の役柄表現を考え抜き、互いに自ら動きをつくらなければ、かように生き生きした人間模様は描かれないのではなかろうか。
 もうこうなれば、読み替えがどうだとか、舞台のスタイルが新しいとか古臭いとかなどという議論は、二の次、三の次ではないかという気がする。

 歌手たちは、歌唱の面でも、予想どおり、みんな勢いが良く、素晴らしかった。
 しかし、むしろ驚かされたのはレヴァインの指揮だ。ひところ━━体調が悪かった頃━━音楽に緊張感が全く失われていた時期もあったが、今や彼も完全に復調した・・・・いや、以前より情感豊かな指揮者になったのではないか? テンポは目覚ましく速めで、追い込みも鮮やかで、歌手たちを見事に「乗せて」いるのはもちろん、オーケストラが笑い、飛び跳ね、怒り、愛する━━それらの表情はこの「フィガロの結婚」の演奏になくてはならないものだが、病から復帰したレヴァインは、ついにそのワザを会得した境地に達したのではないかという気もする。

 舞台美術はロブ・ハウエル。回転舞台を巧妙に使って場面転換を成功させた。ただしこれは、映像で観るよりも、ナマで観た方が、印象も強くなるだろう。

 案内役はルネ・フレミング。要を得た司会ぶりはいつに変わらず見事。増田恵子の字幕も解りやすく、これも完璧である。終映は10時前。

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