2017-10

10・27(月)細川俊夫の「大鴉」日本初演

    津田ホール  7時

 「大鴉」は、エドガー・アラン・ポーの原作。
 ある夜に主人公が独り、死んだ恋人の追想に耽っているところへ、巨大な黒いカラスがやって来る。カラスが喋るのはただ一言、「Never more」という言葉のみ。主人公と鴉の、不思議な、奇怪な一夜が過ぎて行く━━いかにもポーらしく、現実と幻想、理性と狂気が交錯する物語だ。細川俊夫は、これをメゾ・ソプラノと12の奏者のためのモノ・ドラマ(英語版)として作曲した。

 今日の日本初演は、演奏会形式によるものである。
 演奏は、ルクセンブルクを拠点とする現代音楽の専門グループ、アンサンブル・ルシリン。女声ソロはシャルロッテ・ヘレカント。指揮は、「班女」をはじめ、これまで細川の作品をたびたび指揮している川瀬賢太郎。
 そして演奏に先立ち、横内正がポーの原作を日本語で朗読した。

 メゾ・ソプラノ歌手は、この物語を、語り、歌う。それを支える「室内オーケストラ」は、細川らしい精妙で多彩なオーケストレーションにあふれ、音楽の起伏も非常に大きい。それは演技や舞台の動きを描写的に描くものではなく、主人公の心の動きを投影した音楽なのだが、神秘的であると同時に、充分に激しく劇的である。特に今回は現代音楽アンサンブルを起用しての演奏だけに、その音楽も極めて鋭角的な表情になる。

 アンサンブル・ルシリンの演奏が実に巧い。ヘレカントの歌唱も、もう異論を唱えようもないくらい素晴らしい。川瀬賢太郎も充分その責任を果たしていたはずだから、カーテンコールであんなに遠慮したジェスチュアを見せるのは、かえっておかしいだろう。
 今回は照明演出として、佐藤美晴の名がクレジットされていた。が、津田ホールのあのステージでは、趣向の凝らしようがなかったのでは? 
 日本初演にもかかわらず、作曲者がカーテンコールに登場しなかったのはいささか奇異な感だったが、あとで聞いたところによると、ご本人は帰国が間に合わなかった由。

 なお、この「大鴉」は、プログラムの第2部で上演されたものだった。
 第1部では、アンサンブル・ルシリンのメンバーの演奏で、現代音楽が4曲取り上げられていた。プログラムは、クロード・レナースの「弦楽三重奏のための《稲妻の向こうで、赤》」(1991年)、トリスタン・ミュライユの「フルート、ヴァイオリン、チェロとピアノための《鐘の音を渡る葉ずえ》」(1998)、マルセル・ロイターの「クラリネット、ヴィオラ、ピアノのための《インターリュード》」(2007)、ブルーノ・マントヴァーニの「フルートとペタンク球のための《ホップラ》」。
 選曲が良く、演奏も鮮やかなので、どれもこの上なく新鮮なイメージと美しさとにあふれていた。

※この項にコメントをお寄せ下さった「匿名」の方、いつも御親切に情報をお知らせいただいて、あつく御礼を申し上げます。特殊な問題なので、直接ご返事を差し上げたいと思うのですが、非公開指定のメール形式でもう一度ご投稿願えませんでしょうか? あるいは、アドレスだけを非公開で投稿していただいても結構です。お待ちしています。

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