5・18(金)ヤナーチェク:歌劇「死の家から」
アン・デア・ウィーン劇場
アン・デア・ウィーンを訪れたのは数年ぶりだ。改築新装成って、再びきれいな、クラシカルな劇場に復活している。雰囲気もすばらしくいい。
私はオペラの場合には、比較的舞台に近い位置で演奏を聴くのが好きだ。この位置からは、ピットの中で響くオーケストラの細部まで聴き取れて、ふだんなら聞き逃しがちな管弦楽パートの表情豊かな醍醐味を存分に味わうことができるからである。
今回入手できた席は、1階最前列の5番だった。指揮するピエール・ブーレーズがすぐ傍の左側に見える。相変わらず年令を感じさせぬすばらしい指揮を聴かせてくれる人である。全曲1時間45分、彼は休憩なしで振り通した。
それにしても、間近に聴くブーレーズの指揮の見事さといったら! ヤナーチェクのオーケストラのパートが、細部まで精妙かつ明晰に、しかも信じられぬほどに美しく浮かび上がる。どんなに動きの激しい箇所でも、それらは少しも乱れることがないのである。
この作品がいかに多彩で雄弁な音楽を備えているものだったか、これほどはっきりと認識させられたのは今回が初めてであった。この演奏を聴けただけでも、至高の歓びである。
演出はパトリス・シェロー。これがまたすばらしい。
冷たい牢獄の壁を活用したモノクロームの舞台に展開される、比較的ストレートな演出である。囚人同士の間に、オリジナルの台本には特に指定されていない暴力的な啀み合いを作っているのは、解釈の問題だから致し方ないだろう。際立った主役はいないオペラだが、それだけに各囚人が個性的に描かれる必要がある。その点も、さすがシェローの手腕というべきか、鮮やかな出来栄えだった。
ルカ役のシュテファン・マルギータ、スクラトフ役のジョン・マーク・エインズリーが光っていた。シャプキン役のペーター・ヘーレは少し小型だろう。アレイヤはエリック・シュトクローサというテナーが歌った。ペトロヴィッチはオラフ・ベーア、特に長い持ち歌がないので分が悪いが、旦那然とした雰囲気だけは出ていた。
オーケストラはマーラー・チェンバー・オーケストラ、コーラスがアーノルト・シェーベルク合唱団。いずれも立派な出来である。
第2幕冒頭では、囚人の日課(掃除?)のために、天井から大量の紙屑が落される。パントマイム場面では大立ち回りが行なわれるし、同幕最後には垂れ幕が猛烈な勢いで落下する。その都度、濛々たる埃が舞い上がり、四散する。オケ・ピットの中もひどかったろうが、前列の客たちも大変な被害だ。膝に乗せていたプログラムの上を何の気なしにさわったら、ザラザラになっていた。頭から服から、盛大に埃を被ったわけだ。かぶりつきも善し悪しである。
(後日記)
このプロダクションは、絶賛を浴びていると聞く。共同制作として夏のエクサン・プロヴァンス音楽祭でも上演され、これまた評判を呼んだ。09年にはメトロポリタン・オペラもこのプロダクションを取り上げるという。ただし指揮はブーレーズではなく、サロネンの由。それも期待できそうだ。
アン・デア・ウィーンを訪れたのは数年ぶりだ。改築新装成って、再びきれいな、クラシカルな劇場に復活している。雰囲気もすばらしくいい。
私はオペラの場合には、比較的舞台に近い位置で演奏を聴くのが好きだ。この位置からは、ピットの中で響くオーケストラの細部まで聴き取れて、ふだんなら聞き逃しがちな管弦楽パートの表情豊かな醍醐味を存分に味わうことができるからである。
今回入手できた席は、1階最前列の5番だった。指揮するピエール・ブーレーズがすぐ傍の左側に見える。相変わらず年令を感じさせぬすばらしい指揮を聴かせてくれる人である。全曲1時間45分、彼は休憩なしで振り通した。
それにしても、間近に聴くブーレーズの指揮の見事さといったら! ヤナーチェクのオーケストラのパートが、細部まで精妙かつ明晰に、しかも信じられぬほどに美しく浮かび上がる。どんなに動きの激しい箇所でも、それらは少しも乱れることがないのである。
この作品がいかに多彩で雄弁な音楽を備えているものだったか、これほどはっきりと認識させられたのは今回が初めてであった。この演奏を聴けただけでも、至高の歓びである。
演出はパトリス・シェロー。これがまたすばらしい。
冷たい牢獄の壁を活用したモノクロームの舞台に展開される、比較的ストレートな演出である。囚人同士の間に、オリジナルの台本には特に指定されていない暴力的な啀み合いを作っているのは、解釈の問題だから致し方ないだろう。際立った主役はいないオペラだが、それだけに各囚人が個性的に描かれる必要がある。その点も、さすがシェローの手腕というべきか、鮮やかな出来栄えだった。
ルカ役のシュテファン・マルギータ、スクラトフ役のジョン・マーク・エインズリーが光っていた。シャプキン役のペーター・ヘーレは少し小型だろう。アレイヤはエリック・シュトクローサというテナーが歌った。ペトロヴィッチはオラフ・ベーア、特に長い持ち歌がないので分が悪いが、旦那然とした雰囲気だけは出ていた。
オーケストラはマーラー・チェンバー・オーケストラ、コーラスがアーノルト・シェーベルク合唱団。いずれも立派な出来である。
第2幕冒頭では、囚人の日課(掃除?)のために、天井から大量の紙屑が落される。パントマイム場面では大立ち回りが行なわれるし、同幕最後には垂れ幕が猛烈な勢いで落下する。その都度、濛々たる埃が舞い上がり、四散する。オケ・ピットの中もひどかったろうが、前列の客たちも大変な被害だ。膝に乗せていたプログラムの上を何の気なしにさわったら、ザラザラになっていた。頭から服から、盛大に埃を被ったわけだ。かぶりつきも善し悪しである。
(後日記)
このプロダクションは、絶賛を浴びていると聞く。共同制作として夏のエクサン・プロヴァンス音楽祭でも上演され、これまた評判を呼んだ。09年にはメトロポリタン・オペラもこのプロダクションを取り上げるという。ただし指揮はブーレーズではなく、サロネンの由。それも期待できそうだ。
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