2019-11

8・30(土)サントリー芸術財団サマーフェスティバル2014
シュトックハウゼン:「歴年」洋楽版 日本初演

   サントリーホール  6時

 同じ曲を、初日には雅楽器、2日目には洋楽器で演奏し分ける━━などという例は、そうたびたびあることではなかろう。
 今回の洋楽器は、木管、打楽器、シンセサイザー、電子ハープシコード、ギターという編成である。当然ながら2日前の演奏とは響きもかなり違うが、一定の音程を長く保持するといった手法など、雅楽のイメージをそのまま残した部分もかなり多い。雅楽版に比べ、新たな魅力を感じたかと訊かれたら、部分的にはそうだったと答えたい。

 一昨日の雅楽版上演では、演出家には木戸敏郎と佐藤信の2人の名がクレジットされていたが、今日の洋楽版日本初演では、佐藤信の名のみが記載されていた。
 舞人の衣装も邦楽版とは違うため、ダンスの形もかなり違うが、基本のコンセプトは同じである。舞台には「1977」の替わりに「2014」の数字が拡がっているものの、「ライオン」も「ソーセージ」も、「賞金の1千万円札」の看板も同じであり、寸劇も基本的には全く同じ内容である。

 大きく異なる点と言えば、こちらでは悪魔ルツィファー(松平敬)と天使ミヒャエル(鈴木准)とが生身で登場し、背景のスクリーンに投映された姿も含め、悪魔の誘惑と天使の宣揚とを、より具体的に語らせることであろう。一昨日の「奉行」に比べ、レフェリー(高橋淳)の演技も増えた。

 だが、「1977(年)」が「2014(年)」になったからには、「歴年」もそれに対応して描かれるのかと期待していたのだが、何とそうではなかった。ここでも「1977年」で歴年は一応止まってしまい、そのあとの37年間分は、いわばエピローグのような、ジョークのような、つまり「付け足し」のような構成になっていたのだ。
 結局、今回の舞台は、いわば1977年のあとは、ほとんど更新されない「歴年」だったのである。

 これでは、期待外れも甚だしい。プログラム掲載のシュトックハウゼンによる「展望」の項には、1978年以降の舞人の動きについても若干触れられているので、たとえ音楽の枠はそのままであっても、演出の上でも、いろいろやりようがあったのではなかろうかと思う。舞台上の数字が「2014」に替わっただけで、内容が「1977年+α」なのでは、シュトックハウゼンが夢見た「毎年大晦日に上演される」ことなど、とても出来ない相談なのではないか?

 第2部のプログラムは、一昨日と同様、「歴年」への「お答えソング」のような位置付けを持ったものだろう。今日は三輪眞弘の新作「59049年カウンター」(サントリー芸術財団委嘱)の世界初演。木管、弦、打楽器、シンセサイザー、という編成のアンサンブルと、松平敬および高橋淳の「詠人」、および演技者たち10人(桁人)による作品。

 こちらは2011(年)━━いうまでもなく3・11を象徴する年だ━━からスタートするが、「西暦○○年」の数字の変化と、舞台上の桁人たちの動きとは、象徴的な関連づけに留まっている。レインスティックを持った詠人が歌を詠み上げる声を包んでリズミカルに繰り返される音楽は、やや冗長さを感じさせなくもないが、かなり起伏も大きく、かつ宗教的なイメージをさえ生み出していた。
 シェイカーを持ってリズムを刻み続ける桁人たちの衣装はビニールのレインコートのように見えるが、室井尚氏がネットで書いておられるようにそれを「防護服」とまで連想することは、私にはできなかった。彼らの演技は、あたかも御遍路のそれのようにも見え、これもまた祈りのようなイメージを感じさせていた。

コメント

両日同じ席で聴きました(LBブロック)。雅楽は飄々として楽観的、洋楽はやや暗めで不穏な感じに聞こえました。ちょうど日本語の「ひかり」⇔ドイツ語の「リヒト」の響きの違いにリンクするような印象。舞台上の照明設備の真ん中には「光」を意味すると思われる裸電球があらかじめ設置され特定のタイミングで使われていましたが、洋楽版の日は一旦全体の照明を落とし闇とか夜とか影とかの状態をつくってからそれが光り出す仕様になっていましたね。その対比の由来が雅楽⇔洋楽にあるのか1977⇔2014にあるのかは定かではないですが、いずれにしても貴重な機会を愉しみました。

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