2019-11

8・22(金)サイトウ・キネン・フェスティバル松本2014
ヴェルディ:「ファルスタッフ」

   まつもと市民芸術館 主ホール  7時

 松本も暑いが、東京のように火照るような空気でなく、風も少しあるのが幸いだ。4時半、松本駅に着く。

 構内から駅前広場に出る階段のところに、サイトウ・キネン・フェスティバル松本の大きなポスターがかかっている。広場と街の中には音楽祭のフラッグ。
 このフェスティバルが開始された1992年には、駅前のスピーカーからブラームスの「第4交響曲」などが流れ、市をあげてのフェスティバルという、湧き立つような雰囲気があって、感動したものである。20年余も経てば、雰囲気も少し変わってしまうのも仕方がないかもしれない。しかしこの音楽祭はやはり、松本の夏の大行事であるという不動の存在感を持ち続けている。来年からはフェスティバルの名称も新しくなる。

 今日は「ファルスタッフ」の2日目。
 今年のオペラは、最初から発表されていたように、小澤征爾は指揮しない。ファビオ・ルイジがタクトを執った。イタリア・オペラにかけては練達の名指揮者だから、悪いわけはない。

 だが、この客席の寂しさはどうしたことか。1階席は大体埋まっているが、両側のバルコン席は、無人である。入場制限でもしているのかと思ったが、2人か3人は客らしい姿が見えたから、そうでもないらしい。小澤征爾が指揮するとしないとでは、こんなにも客の入りが違うのだ━━もっともこれは、今に始まったことではない。この音楽祭の抱えている大問題の一つが、今回またもや露呈されたようである。

 知人の話では、「安いC席」はある程度埋まっていたそうだから、入場料の問題も絡まっているのだろうけれども(今回のチケット価格設定は、1万円から3万円の間にある)。小澤征爾が指揮していた時には、オペラ公演は常に客席が溢れ返るほどに一杯で、華やかな熱気が渦巻いていたものだった。だが彼が指揮していないと、場内には何か形容しがたい静けさのようなものが漂う。

 小澤が指揮しない時の、サイトウ・キネン・オーケストラの演奏にも、問題がないわけではない。相変わらず力感充分ではあるが、音にもっと色彩感とニュアンスの変化が欲しいのである。よく鳴ってはいるのだが、演奏がどうも無表情で不愛想で、作品への共感といったものが、あまり感じられないのだ。
 もともとファビオ・ルイジも、そう熱気のある音楽をつくる人ではないから、演奏は終始、淡白なものであった。あまり面白味のない「ファルスタッフ」の音楽になっていたのは、何とも残念である。

 歌手陣は、特にスター的な存在の人はいないものの、手堅く歌っていた。
 題名役のクイン・ケルシーはまだ若い人で、この複雑な性格の肥大漢ファルスタッフを描き出すには少し陰翳に不足するのは致し方ないが、それでも精一杯の歌唱だろう。男性陣ではフォード役のマッシモ・カヴァレッティが、第2幕第1場の最後の怒りのモノローグの個所で、オーケストラが鳴っている最中に大きな拍手を浴びていた。フェントンには代役でパオロ・ファナーレ。
 女声陣は、フォード夫人アリーチェにマイテ・アルベローラ、メグにジェイミー・バートン、クイックリー夫人にジェーン・ヘンシェル。3人とも偉大な存在感である。ナンネッタにモーリン・マッケイ。

 演出は、━━またまたここでもデイヴィッド・ニースだ。舞台装置(ロバート・パージオーラ)も含め、博物館から引っ張り出して来たような舞台である。
 もちろん、それなりにまとまりはあるので、愉しんでいた人も大勢いたのは判る。しかしそれにしても、フェスティバルのオペラ制作としては、これはあまりに「後ろ向き」の姿勢ではないのか? たとえトラディショナルな舞台装置ではあっても、人間模様や、個々の人物像の描き方に何か新発見をもたらすような演出があるのなら、まだ良いとは思うのだが・・・・。
 今回は、ナンネッタがファルスタッフとアリーチェの「情事」を興味津々、覗き見るなどの細かい芝居を入れていたのは一つの機軸かと思われたが、上演全体を振り返れば、相変わらず昔ながらの舞台をなぞったものという印象は拭い難いのである。

 休憩1回を含み、終演は9時35分。

コメント

オペラは正面席のみ

オペラは全公演、サイド席は売っていません。座っていたお客がいたのは席を勝手に移動して座ったということです。本来はいけないんですけど。ただ当日券が結構あったのは残念です。小澤でないと行かないのか?ルイージって誰?なんでしょうかね?一般には

ローマ歌劇場来日公演と同じスピリットでつくられた舞台だったと思います。自らが強烈な光を放つのではなく、触媒として観客の感性に奉仕することを選んでいたという意味で。同時にヴェルディが優れた脚本家・演出家・撮影監督・音響技師だったことにも気づかせてくれました。良いチームでした。

こういう舞台に出会ったら、あとは音楽さえ得られれば、どんな場所からでも劇場に飛ぶことができるようになる。たとえそこが体育館やお寺や教会でも。あるいは美術館のロビーの階段の上に膝を抱えて座り、セットも衣装も字幕もなくアップライトピアノ一台の伴奏で聴くことになったとしても。

損な役回りばかりを引き受けているように見えるマエストロには今回も心から感謝します。あの方が世界のどこかで振っている限り、私はオペラを見続けていくことに決めました。今日もう一度、目と耳に焼き付けてきます。

まつもと市民芸術館

そもそもサイドのバルコニー席は明らかに設計ミスです。座席に座って普通の体勢では舞台を観るのは不可能です。

26日の公演はよかったですよ。全体的にレベルが高くルイージ氏も終了後ガッツポーズが出てました。

24日に鑑賞しました。
おっしゃる通りスターはいなくても、マエストリでなくとも、全体的にはキャストのバランスが良いと感じました。期待の若手の一人 カヴァレッティはショナールのイメージが強くどうしても善人のお顔が役柄にはどうかと思いましたが ハッピーエンドのこの演目ならばと。
ファナーレは十八番役なので代役でも安心でしたね。彼にしても去年のバスティーユの演出よりよっぽど今回が良いと思うよね、(笑)とのコメントでした。
ただ、この日はカーテンコールが2回だけで呆気なく終了したのはちょっと焦りました。観客も大人しくいつものこのフェスティバルでは海外並みのコールも少なくないので。
座席に関して、バルコニー席はマエストロ小澤指揮の際は全席完売するので対象になりますね、去年はバルコニーで鑑賞しました。
今回のようなキャスト表は初めてでは?

いづれにしてもオペラを鑑賞するシチュエーションとしてこのフェスティバルは最高だと思います。上野駅や渋谷駅の雑踏などでは余韻も台無しですから。

そして終了後に Tシャツ着て バーイ!とチャリンコで宿に帰るお茶目なルイジはなかなか見られませんよね!
来年はどうなるか、去年よりお元気なご様子のマエストロ小澤で、モーツァルトなど満を持して演って頂きたいと思いつつ。

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