2019-05

7・17(木)レナード・スラットキン指揮リヨン国立管弦楽団

     サントリーホール  7時

 改めて言うまでもなく、先ごろ来日した、大野和士が率いる歌劇場のオーケストラとは別の団体。1905年創設のコンサート協会を母体とするものの、現在のオケの創立は1969年で、歴史は意外に新しい。
 歴代の音楽監督にはフレモー、ボド、クリヴィヌ、メルクルらの名が見える。現在の音楽監督スラットキンは2011年9月からである。

 1979年に初来日した時には、「火の鳥」の最後の方で金管が全部落ちるという事故があって唖然とさせられたが、「フランスのオケでも、ローカルとなるとあんなもんですかね」と、このオケの内情に詳しかった人に訊いたら、「現状はあんなもんですよ、仕方ないです」という返事が返って来たのを記憶している。もちろん、昔の話だ。今はもう堂々たる美音のオーケストラである。

 今回の日本ツアーは、7月9日から19日までの間に、岩手から福岡まで9回のステージをこなすというスケジュールだ。今日のプログラムは、バーンスタインの「キャンディード」序曲、ラロの「スペイン交響曲」(ヴァイオリン・ソロは五嶋龍)、ベルリオーズの「幻想交響曲」。
 最初の「キャンディード」が少々粗っぽい音だったので落胆しかけたが、そのあとのフランスものでは見事にしっとりした柔らかい味を出していたので、安堵。アメリカ生まれのスラットキンが指揮しているのに、アメリカの曲ではアンサンブルが粗っぽくなり(曲が曲だから仕方がないか)、フランスのレパートリーでは綺麗な音になるというのも不思議だが、とにかくどれもスラットキンらしい、滑らかでバランスのいい響きがつくられていたことはたしかである。

 「幻想交響曲」は、第1楽章提示部反復を含め、演奏時間は約55分、テンポはゆっくり目ということだろう。第1楽章序奏や第3楽章冒頭と終結の個所などでは、かなりじっくりとオケを歌わせていた。ただ、それらがあまりにきっちりと几帳面に演奏されていて、幻想に陥っている主人公の心の苛立ちや不安がほとんど感じられない、という特徴もある。

 スラットキンはたしかに、この曲の標題音楽としての性格には、あまり重きを置いていないように思える。
 第3楽章最後での「牧笛」と「雷鳴」は、あくまでコール・アングレとティンパニとの対比に過ぎず、それ以上のものではない,といった感じの演奏。第5楽章第414小節以降の「怒りの日」の個所も、「悪魔たちの歓呼」より以前に、「金管群の最強奏」に過ぎない、という演奏である。その他「、魔女たちの笑い声」にしても同様だ。
 第3楽章でのそのコール・アングレが、いかにも譜面通りに、アクセント付きの4分音符+スタッカートの16分音符━━休止符━━同様の4分音符+16分音符・・・・と、几帳面にはっきりと分けて吹かれて行ったのには少々驚いた。この明快さでは、広い野に寂しく響く牧笛と、それを聞く主人公の孤独感といったものは、ほとんど滲み出て来ないだろう。

 それがスラットキンの個性であり芸風なのだから、それはそれでいいのだろうけれども、私にとってはあまり面白くない「幻想交響曲」であった。
 なお、第3楽章で「遠方の牧笛」を受け持つオーボエは、今回はRB席後方の高い場所に立って吹いていた。こういうやり方は、指揮者やオケや1階席の客にとってはいいだろうが、2階のR側に近い位置で聴いている客にとっては、全然意味がない。

 「スペイン交響曲」も、整然とした演奏だった。五嶋龍も、正確にきちんと弾く。情熱は充分ながら、音楽としての形をあくまで優先するといった演奏である。あまり「スペイン」らしからぬ演奏になっていたものの、これはスラットキンに合わせた音楽づくりか?
 それにしても、五嶋龍は立派な大人の青年になった。あの小さな坊やだったのがつい昨日のことのような気がする・・・・。

 アンコールは、スラットキン自身の解説入りで、ビゼーの「カルメン」から2曲。「第3幕への間奏曲」(フルートの入ったあれだ)は、実に瑞々しく膨らみがあって美しい演奏。次の「前奏曲」は、スラットキンの父君フェリクスが編曲した「カルメンズ・フーダウン」とかいう、ウェスタン風の、「フィドル・ファドル」スタイルの賑やかな音楽に化けていた。見事なご愛嬌である。

 なお読響の事務局から聞いた話では 首席ティンパニ奏者のブノワ・カンブルランは、あのシルヴァン・カンブルランの弟にあたる人だそうだ。そういえば、兄シルヴァンも、もともとはこのオケのトロンボーン奏者だったことを思い出した。1975年には指揮者に転じていたから、前出の「金管総落ち」の時には、あの場には居なかったはず。
       ⇒音楽の友9月号 演奏会評

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