2020-04

7・12(土)広上淳一指揮日本フィルハーモニー交響楽団

   サントリーホール  4時

 この定期、プログラムが実にユニークだ。
 第1部にモンテヴェルディの「オルフェオ」から「トッカータ」、デュティユーの「コレスポンダンス」、ベルリオーズの序曲「海賊」。第2部にプッチーニの「交響的奇想曲」と、「マノン・レスコー」第3幕への間奏曲、ストラヴィンスキーの「プルチネッラ」組曲。
 オーケストラの編成も比較的小さいものから始まり、やがてフル編成になり、最後に再び小編成になる。選曲の奇抜さといい、配列といい、このプログラムをつくった人は、かなりの知恵者だろう。

 大トリに「プルチネッラ」を置いた発想も面白い。この曲は各パートのソロに腕利きが揃っていることが何よりも必要だが、演奏水準上昇中の今の日本フィルならそれが可能と踏んでのプログラミングだったのであろう。
 事実、出来栄えは上々だった。数年前だったら無理だったかもしれない、と楽団関係者も秘かに漏らしていた。今回の演奏の成功の要因に、オーケストラを自然体で鼓舞する広上淳一の指揮の良さもあったことは、改めて言うまでもない。

 冒頭のモンテヴェルディの「トッカータ」は、いきなり金管のファンファーレで開始されるのではなく、テーマが繰り返されるごとに楽器編成をふくらませて行く、という形になっていたが、ここでの楽器のアンサンブルも、すこぶる良いバランスだった。特に2回目のものにおける音色の不思議な美しさが強く印象に残る。
 たった2分程度の短い曲だが、そもそもコンサートで聴けること自体が稀有の曲だし、大いに楽しませてもらった次第である。

 デュティユーの「コレスポンダンス」は、フランス音楽を得意のレパートリーとする谷村由美子のソプラノ・ソロも加わっての、極めて多彩な表情に富む20分ほどの作品。これもふだんはまず聴けない、貴重な曲だった。私の好みとしては、ソプラノは更に抑制した歌い方でもよかったのでは、という感だったが・・・・これはしかし、控えめな意見。

コメント

私は初日(1階10列中央)と二日目(1階15列中央)の両日とも聴きました。ちょっと類を見ない好企画。400年を隔てた諸作品が「劇場音楽」という括りの中で時空を交錯しながら飛び交う。こういう企画を立て、担当者と指揮者が長い時間をかけて練りに練って実現するという試みに感心するばかりです。

どの作品も有名無名を問わず名作揃いで、最初から最後まで満腹感に満たされました。広上淳一の指揮あっての成功でしょう。一曲だけ上げろと言われれば、デュティユーの「コレスポンダンス」。凝った作品で、リルケの詩による「銅鑼(2)」の最後に密やかに響く銅鑼の音色に暫し沈思黙考する私でした。またソルジェニーチンの書簡には多くの示唆や引用が随所に隠されていて、いやでも興味を掻き立てるのでした。例えばデュティユーがロストロポービッチに献呈した協奏曲からの引用かと思わせるところもあり、何度も聴く必要がありそうです。但しソプラノソロには些か問題もあって、例えば声域の狭さは表現の幅を狭めるし、肝腎の聞かせどころで高域の貧しさが表現を限定してしまいがちでした。彼女は以前広上淳一指揮日本フィル横浜定期で「オーヴェルニュの歌」を歌っていますが、その時も同じことを感じています。広上淳一のソリスト選定には時として未熟な若手演奏者が見られるのは残念です。いつもではないけれど、個性の強い実力派ソリストを避ける傾向が広上淳一にはあります。

「プルチネルラ」は日本フィルの精鋭による見事な演奏に脱帽。先月のインキネン指揮「マーラー6番」に続く日本フィルの演奏力はますます上昇しているようです。

ところで面白かったのは、初日と二日目では湿度がかなり違っていてやはり響きに差はありましたが、それが思ったほど大きな差ではなかったこと。台風直後のために湿度が極限まで高かった初日は、席が10列だったこともあって危惧したよりも響きがクリアーでした。ところが二日目は湿度はかなり低い一日。15列でしたから音響的に明晰さでやや劣るかと覚悟していたのですが、初日を質量ともに上回る音響で聴くことができたのでした。座席の位置は湿度の高低で逆転する例として得心した次第です。

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