2019-05

6・22(日)新国立劇場 池辺晋一郎:「鹿鳴館」(再演)

  新国立劇場 中劇場  2時

 尾高忠明芸術監督の任期におけるシーズン・オペラ上演の、今日は最終日。氏自身の指揮するオペラが結局聴けなかったのは残念ではあったが、とにかく、お疲れさまでした。

 「鹿鳴館」は、4年前の6月にプレミエ上演されたもの。再演の今回は、指揮が飯森範親、オケが東京フィルである。
 前回の沼尻=東京響はどちらかというと鋭角的な表現の演奏だったように記憶するが、今回の飯森は、彼らしく骨太で力感に富んだ響きを主体とした演奏をつくり上げた。東京フィルも明晰で張りのある音を響かせ、好演だった。

 配役は今回もダブルキャスト。今日の組には、影山伯爵が与那城敬、朝子夫人が腰越満美、清原永之輔が宮本益光、その子・久雄が鈴木准、大徳寺侯爵夫人・季子が谷口睦美、その娘・顕子が幸田浩子、女中頭・草乃が与田朝子、宮村陸軍大将夫人・則子が鵜木絵里、坂崎男爵夫人・定子が池田香織、━━といった、錚々たる顔触れがそろっていた。

 日本人歌手が日本人役を演じるのだから、演技の上でもみんな見事である。
 特に全篇出ずっぱりに近い朝子役の腰越満美は、しとやかさと気品とを兼ね備えて、鮮やかな存在感というべきだろう。清原を説得する場面での硬軟取り混ぜての表情など、舌を巻くほど巧い。
 影山伯爵役の与那城敬は、前回観た黒田博(今回も別の組に登場していた)のような威圧的な凄みには不足するのがちょっと惜しいけれど、良いものを持っている人だから、これは年輪を積めば解決できるはず。なお彼、「権力者が威圧的に」相手を「指さす」演技のところで、掌を「上に向けて」出してしまうというオペラ歌手独特の癖を出していたが、これは迫力を欠く動作ではなかろうか。

 このプロダクションの演出は、鵜山仁。
 前回(2010年6月24日)にも書いたが、文明開化を追う日本人を風刺する面(戯画的な舞踏の場面)と華族社会の人間的しがらみとを巧みに対比させた舞台は━━原作の三島由紀夫の美学と合致するかどうかは別として━━なかなか秀逸なものである。今回は少し演出を変えたか? 前回の舞台の細部に関する記憶が覚束ないので、どこがどうとまではうまく言えない。ただ今回、第4幕で壮士たちが乱入する個所などはやや抽象的になっていたが・・・・。

 池辺晋一郎の音楽に関しての印象は、前回書いたものをかなり修正しなくてはならない(もちろん良い方向へだ)。最初に聴いた時には判らなかった美点に、2度目に聴いた時にやっと気がつくことがある・・・・とは、誰だったか有名な大作曲家も言っていた言葉だ。今回、注意深く聴き直し、歌詞との関連や、管弦楽配置などに関し、非常に細かいニュアンスにあふれていることに改めて気づき、遅まきながら感嘆した次第である。
 実は私は不遜にも、彼のオペラに関しては「じゅごんの子守唄」以来、正直なところ、ある種の偏見を持っていたのだ(あれはスコアを手に入れて綿密に研究したつもりだ)。だが、━━この「鹿鳴館」は、彼の代表的なオペラたりうる作品ではなかろうか。

 なお今回の上演では、どの歌手も、程度の差こそあれ、歌詞の発音の明晰さが印象に残った。腰越と宮本は特に見事だったが、与那城も「妻のこと」を皮肉っぽく語る個所で非常に細かい芸当を聴かせてくれた。これらは、歌手たちの努力ももちろんだが、指揮者の飯森の上手い音楽上の処理、それに何より作曲者の池辺のスコアの書き方の巧さに由るところも多いのでは、という気もする。

コメント

印象に残らない個性のない音楽。音が多すぎる。言葉が多いのは原作重視の制約があるが、音楽まで鳴らしすぎる必要はない。音楽とは音と音の間の芸術である。ひたすら無意味な音が流れ続いては、音を楽しめない。作曲者の思想がオペラも舞台芸術だから演劇が重視されるというものだが、作曲家としての音楽へのプライドを求めたい。三島由紀夫の作品だけが強調されて三島の文学を舞台で鑑賞した感じだった。

私も、壮士乱入の場面では、初演時には舞台に壮士が現れたような気がしました。頼りない記憶力なので、黙っていましたが。これで意を強くしました。

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://concertdiary.blog118.fc2.com/tb.php/1942-463a28f6
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | HOME |  »

























Since
September 13, 2007

これまでの来訪者数

最近の記事

お知らせ

●2007年7月以前のArchivesを順次、アップロード中です。併せてご覧下さい。
2007年7月
2007年6月
2007年5月
2007年4月
2007年3月
2006年7月

Category

ブログ内検索

プロフィール

リンク

News   

雑誌 モーストリー・クラシック に連載中
「東条碩夫の音楽巡礼記」