2019-05

6・2(月)ヤニック・ネゼ=セガン指揮フィラデルフィア管弦楽団

    サントリーホール  7時

 いい音のオーケストラは、テューニングの瞬間に、それと判るもの。フィラデルフィア・サウンド、今なお健在だ。

 もちろんそれは、昔の━━黄金時代と言われたオーマンディ時代のそれとも、次のムーティ時代のそれとも違う(ストコフスキー時代のは、いくら何でもナマでは聴いていない)。2012年秋から音楽監督を務めるネゼ=セガンが引き出すフィラデルフィア・サウンドは、もう少し凝縮して、引き締まった精悍な趣になっている。
 今日はチャイコフスキー・プロ。「ヴァイオリン協奏曲」と「悲愴交響曲」。

 協奏曲では、艶やかな弦が素晴らしい。これこそまさにこのオーケストラの持ち味の一つだろう。
 そして、協演した諏訪内晶子のソロも、彼女が日本のオケと協演する時とは、まるで別人のように違う。アグレッシヴでメリハリに富む構築、ブリリアントで濃厚な表情、オケを圧するばかりのたっぷりした豊麗な響き、━━それらを含め、極めてスケールの大きな、豊潤なチャイコフスキーになっていたのである。

 そういえばかつて、日本のあるオケとブルッフのコンチェルトを弾いた彼女の演奏が非常にリズムも鋭く、劇的な演奏だったのに嬉しくなった私がそれを賞賛した時、彼女は「これでもかなり抑えた方なんですけど」と答えていたことがあった。
 言いかえれば、華麗な個性のオーケストラと一緒に弾く際には、それに合った力を全開する、ということだろう。それができるというのは、やはり彼女の著しい成長を示す証しであろうかと思う(どんなオケと協演してもやはり、それと比較すると平板な表情にとどまったまま、という日本人ソリストを、われわれは残念ながら何人も聴いているのである)。
 ただ、今日の諏訪内の演奏は、そういう素晴らしさを感じさせながらも、一方で終始ハイ・テンションのまま押し切りすぎたかというような、やや一本調子のところもあったかな・・・・という印象も、なくはなかったのだが。

 ネゼ=セガンは、ピウ・モッソの個所だけでなく、クレッシェンドの個所をはじめ、随所でテンポを猛烈に煽る。この呼吸はすこぶる鮮やかで、諏訪内とともに、大いに燃えたチャイコンになっていた。

 ところが、「悲愴交響曲」では、━━もちろん音は相変わらず美しいのだが、何だか不思議にアンサンブルの雑な演奏になってしまっていたのだ。特に木管群にその粗さが目立ち、指揮者の煽るテンポに混乱気味となって追いつかなくなるという傾向が聞かれたのである。ツアー疲れかどうか知らないけれども、まあこれは要するに、単なる練習不足ではなかろうか。オケが基本的に上手いのはよく判る。

 ただ、第3楽章のシンバルが妙に前のめり気味のテンポ(4分音符一つ分もしくは8分音符一つ分)で打ち鳴らされるのが気になった。4発とも同様だったから、これは意図的なものなのか、あるいは、「遅れて聞こえる」のを避けるための細工なのか。
 第4楽章最後のチェロの持続音の艶やかさは、流石、このオケならではのものであった。

 アンコール曲はチャイコフスキーの「エフゲニー・オネーギン」からの「ポロネーズ」。出だしは景気良かったが、その後の演奏は、意外におとなしい。
 結局、前半に比べ、後半の2曲の演奏は、表面上は華麗だったものの・・・・とでも。

コメント

豪快ミドルシュート

一流サッカーチームの試合を見るような爽快さがあるが、「ジュピター」は、これってモーツァルト?という出来。余計なデフォルメが多く、違和感がある。ところが、「巨人」となると、当楽団特有の「豪快なミドルシュート」が、決まる場面が出てくる。さすがアメリカと言う底力を感じさせたが、それに慣れてしまうとちょっと単調に・・・。

シンバル4発 !!

1F11列で聴いていました。先生ご指摘の「シンバル4発」については
私もびっくり。1発だけなら「やりやがったな」なんですが、全部同じタ
イミングでしたね。。。

弦楽合奏が美しかったです。金管(ホルン)は一流オケとしては不安定すぎ、木管はいい方に目立っていたと思います。
諏訪内さんは、かつてのレベルと比べると、80%かと思いましたが、年齢を重ねて、こういうスタイルという意味では、さすがなソリストだと改めて感心しました。

「悲愴」はネゼ=セガンの名刺代わりの曲目とのことで、速めのテンポで、若々しい演奏でした。
フライング拍手を普段は気にしないようにしている私ですが、指揮者が指揮棒をキープし続けている中、拍手を始め、誰も追随する人がなく、途中で拍手をやめてしまった大バカ者(2階右サイド)がいて、興ざめでした。

趣味が…

昨夜の放映ですが音楽の趣味も楽団のクオリティーにも耳を疑いました。
あのフィラデルフィア管が…

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