2024-03

2014・5・10(土)山田和樹指揮日本フィルハーモニー交響楽団
       コルンゴルト&ラフマニノフ

    横浜みなとみらいホール  6時

 コルンゴルトの「ヴァイオリン協奏曲」と、ラフマニノフの「交響曲第2番」。
 いい組み合わせだ。
 プログラムの解説(中村伸子さん)のタイトルにも「稀代のメロディーメーカー~20世紀のロマンティストたち」とある。この2つの作品の特徴を巧く要約した表現だろう。

 何しろコルンゴルトの協奏曲の第1楽章など、彼の映画音楽「砂漠の朝」他から転用された主題が何ともトロリとした美しさだし、第3楽章に現われる「放浪の王子」のテーマ(彼の影響を大いに受けたジョン・ウィリアムズの「ジュラシック・パーク」のテーマと雰囲気が似ている)も、不思議な懐かしさを醸し出す。
 そしてラフマニノフの「2番」と来たら、これはもう、よくもまあこんなに甘いメロディを次から次へ繰り出すものだと感心させられるほど、ねっとりとした交響曲だ。しかし、いずれもそれが何とも言えぬ魅力となっていることは、紛れもない事実である。

 この見事なほどに甘美な叙情性を湛えた2つの作品で、山田和樹は、実に濃厚きわまるカンタービレを利かせてくれた。それを受けて日本フィルが、これまたこのオーケストラには珍しいくらいのしっとりした味で歌い上げた。
 特にラフマニノフの第1楽章や第3楽章で、いや第4楽章においてさえも、これほど耽溺といってもいいような、何かに深くのめり込んだような演奏が日本のオーケストラから聴かれたことは、そう多くはないだろう。

 コルンゴルトの協奏曲では、オーケストラのアンサンブルはあまり完璧とは言えなかったものの、作品自体が持つまろやかな響きは、多くの個所で生かされていたように思う。
 ソリストの小林美樹も、官能的だが品のいい、清涼な叙情美を聴かせてくれた。演奏にもう少し張りのある音と音量があれば、もっとよかったろうが・・・・1階席で聴けばどうだったかは判らないけれども、私が聴いていた2階席センター3列目(屋根の下になる)では、ソロの音量はいかにも「遠く」聞こえ、第1ヴァイオリン群に埋没してしまうことが多かったのである。

 交響曲のあとにアンコールとしてラフマニノフの「エレジー」だかが演奏されるとかいう話を聞いていたが、山田とオーケストラはあっけなく一礼して退場した。まあ、アンコール曲があればあったで愉しめたろうが、何せコルンゴルト&ラフマニノフという濃厚きわまる料理のあとで更に甘美なアンコールが続くとなると、聴く方も美食に飽いた気分になるかもしれなかったから、これはこれでよかっただろう。
 ともあれ、聴き応えは充分。流行りの(?)コルンゴルトが聴けたのも嬉しかった。

 コルンゴルトの作品としては、今月27日にも、マルク・アルブレヒト指揮の東京都響が「交響曲」を演奏することになっている。これも楽しみにしているところだ。

 なお、山田和樹によるラフマニノフの「第2交響曲」は、昨年9月に仙台フィルを指揮したライヴ録音がオクタヴィア・レコードからCDで出ている(OVCL-00532)。なかなかいい演奏だ。

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