2020-04

11・22(金)上岡敏之指揮読売日本交響楽団

    サントリーホール  7時

 高栄養価の脂肪分たっぷり、ヨーロッパの美食料理を堪能したこの数日間のあと、久しぶりに日本に帰って来た、という安堵感(?)を得たような今夜の演奏会。
 だがこの和食の、いや日本のオーケストラの演奏は、欧州の大管弦楽団のそれに対して、少しも引けを取らない水準にあったろう。立派な演奏であった。

 ドイツで活躍する、わが国随一の個性派指揮者・上岡敏之にとって、いま日本で一番相性のいいオーケストラは、この読売日響かもしれない。今回はブラームス・プロで、「ピアノ協奏曲第2番」(ソロはデジュ・ラーンキ)と「交響曲第3番」が演奏された。

 かつてアンドラーシュ・シフ、ゾルタン・コチシュとともに「ハンガリーの若手3羽烏」と言われたデジュ・ラーンキも、今年もう63歳。品のいい老紳士となった彼が弾き出すブラームスは、表情豊かな風格と、おしつけがましくない端整さを備えていて、快い。第1楽章では僅かに不安定なソロも聴かれたものの、第3楽章での逍遥するような、モノローグのような沈潜さを加えつつ終結感を出して行くあたりは、この人の健在ぶりを印象づける。
 それに加えてこの曲での上岡と読売日響の演奏が、率直にして誠実、見事なサポートぶりだ。第3楽章でのチェロのソロは、何と特別ゲストの宮田大。同楽章最後の管楽器群のハーモニーの美しさも出色であった。

 「第3交響曲」では、協奏曲では遠慮していた感のある上岡の個性的なアプローチが一気に噴出する。といっても、それほど奇を衒った演奏ではなく、全曲の骨格をしっかりと構築した上に自由な感興を織り込むといったタイプものだ。
 弦を羽毛のように柔らかく、陰翳ある音色で、また木管も柔らかく、くぐもった音色でそれぞれ演奏させ、あたかもドイツの良き地方色を備えたオーケストラのような音を、読売日響から引き出していたのが興味深い。
 この曲でも、特に木管楽器群のバランスには面白いものがあり、各楽章の最後の、弱音での終結和音の美しさが印象に残る。ただ、第2楽章における木管群による主題の中で、1番クラリネットをむしろファゴットの中に埋もれさせるようなバランスで吹かせていたのは、上岡の解釈なのかどうかは判らないけれども、多少疑問が残る。

 上岡にしてはあまりピリピリしたエクセントリックなところのない、むしろたっぷりと叙情感を、稀に激しい劇的な振幅を表出するといった「3番」ではあったが、通常のリハーサル時間内で、かように音符の隅々まで神経を行き届かせ、オーケストラを完全に制御することができるのは見事と言うべきだろう。読売日響の柔軟な反応力も、いつもながら優れたものだ。
 今夜の演奏、協奏曲は立派なブラームス、交響曲は面白いブラームス、とでも言うか。

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