2019-05

11・19(火)アンドリス・ネルソンス指揮バーミンガム市交響楽団

    東京オペラシティコンサートホール  7時

 昨日から24日までの間に東京4公演、北九州と西宮で各1公演というのが今回の来日ツァーの日程。

 ヒラリー・ハーンとエレーヌ・グリモーをソリストに加えた今回のツァーの布陣は、普通なら強力のはずだが、折しも東京はウィーン・フィル、ベルリン・フィル、コンセルトヘボウ管の所謂「欧州3大オーケストラ」が入り乱れる修羅場。知名度に於いて一歩及ばぬネルソンスとバーミンガム市響が、どうしてもワリを食う立場になるのも、仕方のないところか。
 特に昨日は、ウィーン・フィルこそ帰ったものの、ヤンソンス率いるコンセルトヘボウはまだ公演があったし、ラトル率いるベルリン・フィルも東京初日だったから、さすがにこちらバーミンガムは些か苦しかったようである。

 最近は平日のマチネーでも結構客が入る時代だから、昨日の公演(ヒラリー・ハーンがゲスト・ソリストで出た)など、マチネーでやっていれば、他のオケとカケモチで聴こうという人も多かったのではないかと思うのだが如何。
 しかし思えば、ネルソンスはヤンソンスの同郷の後輩であり愛弟子でもあり、バーミンガム市響もかつてはラトルが音楽監督を務めていたオケでもある。面白い因縁だ。

 それはともかく、ネルソンスとバーミンガム市響は、見事な意地を示した。熱演また熱演の充実したステージは、「3大管弦楽団」に対して些かも引けを取らない出来だったと言って良い。
 最初の「プロメテウスの創造物」序曲(ベートーヴェン)の第1音からして、凄まじい気合が入っていた。音色はブリリアントで、重量感があり、演奏には闊達な活力があふれんばかりに漲る。

 エレーヌ・グリモーとの協演によるブラームスの「ピアノ協奏曲第1番」でも、ネルソンスは遅めのテンポで押し、特に第2楽章では秘めやかな、しかもスケールの大きな叙情感をつくり上げる。ここは絶品であった。
 2人が協演したこの曲のCD(グラモフォンUCCG1637~8、バイエルン放響)もつい先頃出たばかりだが、流石にこの手兵バーミンガム市響とのナマ演奏を聴くと、ネルソンスがどんなに微に入り細にわたって音を綿密に仕上げているかが、逐一判る。

 グリモーのソロも、切り込み鋭く、しかも瑞々しい息吹に満ち、実に形容しがたい素晴らしさだ。アンコールはラフマニノフの「音の絵」作品33の2で、私はオーケストラ・コンサートでソリストが長いアンコール曲を延々と弾くのには基本的に賛成できないタチなのだが、このグリモーの演奏だけは、いつまでも聴いていたいほどの魅力にあふれたものであった。

 休憩後にはブラームスの「第4交響曲」。これこそまさにネルソンスの本領発揮。気心知れた手兵のオケだからこそ、このように思い切ったテンポの変化、デュナミークの変化を付与して、千変万化の表情を持つ演奏を創れるのだろう。
 それは少し誇張が過ぎると思える瞬間もないではないが、これだけ演奏が緻密に、すべての音符に神経を行き届かせて、完璧な均衡を備えた形で構築されていると、異論も唱えにくくなる。
 第2楽章の第2主題における弦楽合奏のしっとりした厚み(第41~49小節、88~95小節)が、これだけ美しい表情で演奏された例も稀であろう。第4楽章のあのフルート・ソロが終ったあと、クラリネットやオーボエの動きの下にヴィオラとチェロが加わって来る個所(第105小節以降)なども、ハッとさせられるような神秘的な優しさに富んでいた。

 ネルソンスは、長身をまるで踊るように動かし、長い腕を振り回して、細かい指示よりも、イメージを与えるような指揮をする。バーミンガム市響も、すでにネルソンスとともに音楽の細部まで完璧につくり上げているので、指揮者のそんな身振りに応じて、変幻自在に動く。見事なコンビだ。

 アンコールはエルガーの「朝の歌」。ネルソンスが英語で「温かい雰囲気がうれしい」と挨拶、楽員の1人がたどたどしく日本語で曲を紹介し、「マコトニアリガトゴザイマシタ」と、ホール全体を和やかな笑声と拍手で包んだ。実にいい雰囲気で結ばれたコンサートであった。木曜日(21日)のチャイコフスキーの「5番」や、ヒラリー・ハーンとのシベリウスの協奏曲も、きっと聴きものだろうと思う。

コメント

東条さんとは見解が一致しないことの方が多いけど、今回は概ね賛成です。

でも一言だけ。
私、「手兵」って言葉、大っ嫌いです。
各種媒体で見かけるとイラッとします。

今日のところは以上です。
お疲れさまでした♪

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