2019-07

11・18(月)マリス・ヤンソンス指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

     東京文化会館大ホール  7時

 来日最終公演で、ワーヘナールの序曲「じゃじゃ馬ならし」、ストラヴィンスキーの「火の鳥」組曲、チャイコフスキーの「交響曲第5番」というプログラム。

 指揮者とオケの素晴らしさについては、一昨日書いた。
 だがこちらの会場のアコースティックは周知のごとく、清澄ではあるものの残響が少ないため、オーケストラの響きもドライになって生々しい存在感が薄らぎ、音色も淡彩になる。1階席で聴いていると、「5番」第1楽章でのほんのちょっとした音のずれまで目立ってしまうという具合だ。そんなことをあれこれ言う聴き方は、ふだんなら絶対しないのだけれど――。

 オランダの作曲家ワーヘナールJohan Wagenaar(1862~1941)の序曲「じゃじゃ馬ならし」は、1909年の作曲だというけれども、まるでワーグナーの最初期の作風(1840年頃)をさえ思わせる奇妙な作品だ。オランダの作曲家の作品をせめて1曲、という意向は大変結構だが、もう少し、ほかに選曲の仕様もあったのでは? 

 最後のアンコールにはチャイコフスキーの「眠りの森の美女」からの「パノラマ」。曲の終りは原曲通りとはいえ、何だか少しあっさりした終り方の演奏だった。
 しかし、あっさりエンディングという点では、「5番」の第1楽章の結尾の演奏の方が意外だったろう。スコアでは「p3つからの漸強―漸弱」という謎めいた効果を出す指定になっているのだが、ヤンソンスはこれを漸強で保持したまま、最後をものの見事にスパッと切った。そのため音楽はふだん聴き慣れたものとは全く違うイメージになり、チャイコフスキーがえらく「思い切りのいい」人物像と化したのである。
 あの「英雄の生涯」のエンディングといい、これといい、ヤンソンスも面白いことをやるものだ。

 一方、念入りに過ぎたのは、演奏会の幕切れ。
 皇太子ご夫妻が見えていたのだが、オーケストラもヤンソンスも、皇族が退場されるまでは袖に引き上げるつもりが無い。一方皇太子ご夫妻も、演奏者が退場するまで拍手を止めない。舞台と2階席とで駆け引き(?)が延々と続き、その間、満席の聴衆は舞台を見たり、2階席を振り返ったり、首を交互に廻しながら、これまた延々と拍手を続けたのであった(結局ヤンソンスとオケが恐縮しつつ、先に引っ込んだ)。
 私の経験ではこういうケースは、かつてこのホールで朝比奈隆さんがブルックナーの「5番」を指揮し、それを今上天皇が聴きに来られた時に全く同じことがあって以来、2度目である。
      日本経済新聞
      モーストリー・クラシック2月号演奏会Review

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18~21日と全く同じ公演に足を運びましたので、興味深く拝読いたしました。
(私は16日ベルリン・フィル、17日はコンセルトヘボウと辿りました)

アンコールの「パノラマ」は全体的にもあっさり目に感じられ、ホール環境のせいもあるかも知れませんが、ステージ上をうねるような馥郁たる香りが欠けていたような..。 休憩時間中にハープのペトラがチューニングをしておりましたので、『この曲が来るかもっ!』と楽しみに待っておりましたのに、肩透かしをくわされた如しでした。 2010年の名古屋公演では4番の交響曲のアンコールとして眠りの森の美女「アダージョ」の部分を取り上げておりましたが、こちらはうっとりと音の波に浸り続けていられる名演だったかと存じます。

17日のアンコールはペール・ギュント組曲より「ソルヴェイグの歌」で、2008年に「山の魔王の宮殿にて」でドッカーンと盛り上げて締めたのとは対照的に、なんとも存分にたっぷりと聴かせてくれまして、満足度はすこぶる高かったです。 ちなみに譜面台には"Der Rosenkavalier"のスコアも用意されてはいました。

アックス氏はショパン「ワルツOp.34-2」と「マズルカOp.30-2」をピック・アップして下さいましたが、特に後者は指が立ちつつ華麗に舞っておりまして、『ショパンの譜面どおりに指をダンスさせれば、結果としてこういう音になって後から附いてくるんだよ』とでも語っているかのようで...。 ピョートル・アンデルジェフスキ以上のカルチャー・ショックでした。 全くもってポーランドにルーツを持つ方々のマズルカ演奏ってのは!

重度の介護の合間を縫って、2月6日(マリス・ヤンソンス降板)Gustavo Gimeno指揮でコンセルトへボウ管を聴きました。結論は、日本に既に来ていますし、梶本音楽事務所が招聘元になるのだそうですが、本当、真面目に、日本に来てほしい人材です。在京オケで振るのなら、NHKではなく、都響になるでしょう。この人材の個性を壊さないためです。

2月12日、パブロ・ヘラス=カサド指揮も聴きました。J.ヤンセンのVnです。ショスタコヴィッチ、シマノフスキ、シベリウスのプログラミングです。

前者も後者も20世紀モノが得意とのこと。はっきり云って、Gustavo Gimenoが優勢。

マリス・ヤンソンスに縁がないのか、海外旅行で降板になっているのは、これで5回目。そして、5人とも頭角を現してきている人ばかり。

もし、重度の介護から開放されたとき、またヤンソンスの指揮でチケットを購入しても代役指揮者が頭角現してくるでしょうね。

新しい指揮者が頭角を現してくるの、本当に気持ちがいいものです。

日本にもっと、新しい人材を受け入れる土壌があれば、著名な指揮者がたくさん在京オケを振るのにね。
新しい人材に冷ややかな日本の土壌、残念なことです。
**********
ネザーランド・オペラの指輪チクルスを観ました。
第1チクルスの’黄昏’を観て、第2チクルスの’ジークフリート’まで。

これだけ豪華な歌手陣が揃い踏みするのは、真面目にないでしょう。

この演出、今回でお釈迦。残念です。日本では過小評価されているアムステルダム・オペラ。2017-2018年から、マルク・アルブレヒトが、メイン指揮者になることが大々的に報じられています。

2月17日(月)、”ダッチ ナショナル オペラ”に名称が正式変更になることのセレモニーと次シーズンのプログラムが発表になります。

このオペラハウスは、お勧めです。なぜなら、体格の大きいオランダ人に合わせた座席の作りになっているので、私たち日本人には、プレミアムエコノミークラスの座席間隔になってしまうので、リラックスして鑑賞できることです。

今シーズンのお勧めは、MET・コヴェント・ミラノとの共同制作で、日本公演にもなった”Falstaff”です。Gatti指揮コンセルトへボウ管ですから。

座席カテゴリーが細かいです。8ランクあります。上から3番目まででの鑑賞を薦めます。第5カテゴリーの席でなおかつカメラ収録用座席で聴いていると、視界が遮られることになります。(字幕自体が見えない)

ところで、’Ring'のジークフリートです。
第1チクルスは、映像記録収録しています。そのStig Andersen、元々立ち上がりの悪い歌手なのに、最後まで、声が伸びませんでした。Kurt Rydlは、総支配人(演出家)が出てきて「調子が悪いけど、歌う。」とのアナウンスあり。段々、調子を上げました。
第2チクルスのジークフリート役は、単発公演時のStephen Gouldに全面変更へとつながっていきました。ハンブルグ・オペラの”Fidelio”とかけもち。

ぜんぜん違いましたから。降板になったことも良くわかります。

トマス・ヨハネス=マイヤーのWotan役を通しで歌うのは、アムステルダムにて、初めて。この人は、さすらい人での歌い方が明らかに似合っていますね。

Stig Andersenとキャスリン・フォスター。Stephen Gouldとキャスリン・フォスター。声の輝き度と力強さは、後者。第2チクルスの’黄昏’は観ていませんが、第2夜”ジークフリート”で歴然と判ってしまいました。

後者は、初顔合わせです。9月の”ジークフリート”のブリュンヒルデは、C.ネイグルスタットだからです。
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アムステルダム、好きな劇場になってしまいました。本当に座り心地、横幅も前との間隔もちょっと贅沢な間隔です。(オランダ人にとっては普通でも、日本人向けのプレミアムエコノミー席です。)

このプロダクションは、ハルトムート・ヘンヒェン指揮ネザーランドフィルと演出家(総支配人)があっての作品です。DVDやCDでは、伝わっていないことがきっと必ずたくさんあることでしょう。
舞台装置とその構成(コンセプト)は変わっていても、繰り返しの多い上演とシングルキャストの公演。
本当に、<心憎いばかりの気配りの本当に行き届いた>歌手の歌いやすい配慮が’これでもかというくらいの配慮’がなされているから、こんな凄い配役が可能なのだと思います。

ネザーランド・オペラ(ダッチ ナショナル オペラ)は、侮れない過小評価していけない劇場です。

”百聞は一見にしかず”の劇場です。まずは、大規模に新体制が移行するまでに是非、出かけてみてください。

観客層も若いです。1600人収容の劇場ですが。。御覧になるなら、8ランクある第3カテゴリーまで。Revival上演になっている総支配人の演出も良いですが。他の作品も注目に値する公演も多いです。

とにかく、”百聞は一見にしかず”の典型的な上演でした。歌手の栄枯盛衰を目の当たりにできる公演でもありましたし。

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