2019-05

11・3(日)ユベール・スダーン指揮東京響のブルックナー「4番」

   ミューザ川崎シンフォニーホール  2時

 1曲目の、シベリウスの「ヴァイオリン協奏曲」の第2楽章のさなかに地震が来た。
 軽く揺れただけで、客席も微かにざわめいたに過ぎなかったが、このホールで地震に遭うとあまりいい気持はしないのが人情だろう。楽員も聴衆も一様に、何となく天井を見上げてしまう。

 しかし、闊達な身振りと熱っぽい演奏が身上のソリスト、レイ・チェンは、この地震をふっ飛ばす勢いのシベリウスを聴かせてくれた。今年24歳、意気盛んな若者の体当り的な演奏だ。微笑ましく、快いものがある。
 とはいうものの、かなり即物的でリアルな、明朗な一方で陰影には未だ不足気味の、裸の生々しい音が躍動するシベリウスだったこともたしかで、その点ではスダーンが東京響から引き出す落ち着いた翳りのある叙情的な音色のシベリウスとは些かそぐわないものがあったが。

 休憩後のブルックナーの第4交響曲「ロマンティック」は、スダーンの個性が余すところなく発揮された快演だ。以前の「7番」や「8番」と同様、がっしりと堅固に構築された、息詰まるほど厳しい表情にあふれた演奏である。

 特に、昂揚した個所での全楽器群の響きの均衡は完璧に近く、たとえば第3楽章で、全合奏が一段また一段とクレッシェンドを重ねて最後の豪壮な最強音に達するところなど、法悦的な充足感を与えてくれる。最後の7小節間ではホルン群の3連音も明確に聴き取れ、スダーンの巧みな設計を感じさせた(この楽章が終った時、だれかが思わず拍手をしたが、その気持は理解できる)。

 もっともその一方、弱音個所では、スダーンは弦楽器群のトレモロの音量を、極度に抑制していた。率直に言うと、2階B(以前は3階と言ったか?)中央で聴いていた筆者には、このトレモロはすこぶる聴き取りにくかった。それゆえ、金管や木管を支え包むはずの厚みと壮大さ、空間的拡がりといった響きが失われ、音楽が鋭角的に聞こえて、違和感を抱いたのも事実だったが・・・・。

 なお今回の演奏では、1番ホルンのパートを――第1楽章冒頭のソロは別として――アシスタント(の位置に座っていたジョナサン・ハミル)との2本でダブらせることが多い方法を採っていたが、これは1番ホルン・パートの音色をふくよかな響きにする効果を生んで、成功と思われる。
     音楽の友12月号 演奏会評

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