2019-05

10・12(土)スクロヴァチェフスキ指揮読売日本交響楽団

   サントリーホール  7時

 スタニスラフ・スクロヴァチェフスキの自作「パッサカリア・イマジナリア」と、ブルックナーの第4交響曲「ロマンティック」を組み合わせたプログラム。

 「パッサカリア・イマジナリア」は、ミネソタ管弦楽団の委嘱により1995年に作曲され、翌年同管弦楽団で、当時の音楽監督・大植英次の指揮により初演された由。
 曲は、多数の打楽器も加えた大編成が採られている。冒頭の長く続く静寂の中でコントラバスが奏しはじめる主題が全曲の基盤となり、パッサカリアが構築される。断続する短い音型が各楽器に受け渡され交錯しつつ、鋭角的な響きの裡に展開されて行くが、この飛び交う音たちの鋭さ、激しさ、緊迫感は見事だ。時にメシアンを思わせる金管の動きが聴かれるのも興味深い。

 しかも、これを指揮するスクロヴァチェフスキの厳しい集中性たるや、驚くべきものがある。読売日響の弦楽器群の音色も、艶やかで素晴らしい。
 演奏時間は26分と予告されていたが、実際は22~23分で済んでしまった。スクロヴァチェフスキ自身の作品はこれまでいくつも彼の指揮で聴く機会があったが、今回の曲は、それらの中で最も面白いものであった。

 「ロマンティック」は、ティンパニのパートの追加やシンバルの追加(第4楽章で計3回)、ハース版とノーヴァク版の混合など、いわば「スクロヴァチェフスキ版」による演奏であるのは、いつもと同じ。
 それに加え、楽器のバランスづくりにおいても彼の個性が随所に出ていて面白い。第3楽章スケルツォ部分のエンディングで、トランペット、トロンボーン、ホルンが交互に前面に立ち現れ、主役を受け継いで行く個所など、その一例だ。また第4楽章第170~180小節あたりでのホルンの6連音の驚くべき最強奏と、それに続くトランペットとトロンボーンなどの咆哮などは意表を衝く強調であり、やってくれるわスクロヴァさん、という感がある。

 彼の強靭な集中力の凄さはここでも発揮された。一方、読売日響は、分厚い量感というよりは、あまり重々しくない明晰な音で、かつ硬質でピリピリした緊張に富む音で応えていた。
 ソロも全体としては安定していたが、TV収録もあってか、あるいは初日の演奏とあってか、何か緊張しまくり、慎重に構えた雰囲気を感じさせていたのも事実であろう。2日目(14日)の演奏では、もう少し肩の力を抜いたものが出るのではないか。第3楽章など、最初の演奏よりは、リピートの部分の演奏の方が、はっきりそれとわかるほど音が整っていった、という例からも推察されるように。

 全体にデュナミークの幅が極端に広く、これもまた演奏を鋭角的に感じさせた一因でもあろう。随所に現われる静寂なピアニッシモの中で、客席は水を打ったように静まり返り、聴衆すべてが息をつめて聴き入るという印象であった。

 スクロヴァチェフスキは、先週90歳の誕生日を迎えたばかり。その矍鑠たる指揮ぶりは、本当に見事というほかはない。
  音楽の友12月号 演奏会評

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://concertdiary.blog118.fc2.com/tb.php/1752-2dc68cd3
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | HOME |  »

























Since
September 13, 2007

これまでの来訪者数

最近の記事

お知らせ

●2007年7月以前のArchivesを順次、アップロード中です。併せてご覧下さい。
2007年7月
2007年6月
2007年5月
2007年4月
2007年3月
2006年7月

Category

ブログ内検索

プロフィール

リンク

News   

雑誌 モーストリー・クラシック に連載中
「東条碩夫の音楽巡礼記」