2020-05

6・28(金)バーゼル歌劇場 モーツァルト「フィガロの結婚」

   東京文化会館大ホール  6時30分

 スイスの「バーゼル劇場 THEATER BASEL」が初来日。
 しっとりした、洒落たつくりのプロダクションだが、この本来の味を生かすには、東京文化会館大ホールはどうも巨大空間に過ぎたようである。日生劇場程度の広さだったら、もう少し良さが出たであろうと思う。
 演出はエルマー・ゲールデン、舞台美術はシルヴィア・メルロとウルフ・シュテングル。

 場面設定を現代のロサンゼルスの高級住宅に移し、裕福な生活にもかかわらず何かの欠乏感に囚われている人々を描くという演出コンセプトは悪くないし、むしろこのドラマの意外な本質をついたものであるかもしれない。そうした欲求不満の嵩じる先がセックスであるという描き方も当を得ているだろう。

 が、そのコンセプトの割には、舞台から突き詰めたもの、というか、リアルな人間のドラマのようなものが伝わって来ないのだが、・・・・これはもう、「巡業公演」の宿命だろうか。伯爵夫人は鬱症だという演出家の説明(プログラム掲載)はあるものの、実際の演技からはどう見てもそんな様子は感じられない、というが如しである。

 まあ、それなりに演技は細かいし、キューピッドの矢を象徴するとかいう「紙飛行機」が乱舞するなどの趣向も織り込まれているけれど、少々アイディア倒れで、際立って印象的な特徴は見られない、というプロダクションであった。ただし、舞台進行をもっとぎりぎり追い込み、演出意図を徹底すれば、更に優れたものが引き出せるかもしれない。

 主要歌手陣は、エフゲニー・アレクシェフ(フィガロ)、マヤ・ボーグ(スザンナ)、クリストファー・ボルダック(アルマヴィーヴァ伯爵)、カルメラ・レミージョ(伯爵夫人)、フランツィスカ・ゴットヴァルト(ケルビーノ)他。

 演奏はジュリアーノ・ベッタ指揮のバーゼル・シンフォニエッタ。
 ベッタはこの劇場の音楽シェフであるとのことだが、指揮はやや平凡だ。今回一緒に来たオーケストラも些か雑で、特にホルンは、ああもしばしば派手なトチリを繰り返すと、ご愛嬌では済まなくなるだろう。

 それに対して素晴らしかったのは、レチタティーヴォの際にピット上手の舞台上の袖で弾かれていたフォルテピアノ(イリーナ・クラスノフスカ)の、おそろしく雄弁な表現だ。ワーグナーのライトモティーフのように「それに関連した過去の思い出」を織り込む手法はもちろんのこと、ワーグナーの「結婚行進曲」やガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」まで軽快に引用するという才気煥発ぶりであった。

 10時10分頃終演。チケット配布の関係だろうが、若い観客が非常に多かった。それ自体は歓迎すべきことである。

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://concertdiary.blog118.fc2.com/tb.php/1685-6d256d94
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | HOME |  »

























Since
September 13, 2007

これまでの来訪者数

ブログ内検索

お知らせ

●2007年8月以前のArchivesを順次、アップロード中です。併せてご覧下さい。
2007年8月
2007年7月
2007年6月
2007年5月
2007年4月
2007年3月
2006年8月
2006年7月
2006年4月
2006年3月
2005年12月
2005年8月
2005年4月
2005年3月
2004年4月

最近の記事

Category

プロフィール

リンク

News   

雑誌 モーストリー・クラシック に連載中
「東条碩夫の音楽巡礼記」