2020-04

6・15(土)ダニエル・ハーディング指揮マーラー・チェンバー・オーケストラ

    軽井沢大賀ホール  3時

 今回のハーディングとマーラー・チェンバー・オーケストラ(MCO)の日本公演は、この軽井沢と、明日の名古屋の2回だけ。オーストラリア公演と帰国との合間に飛んで来たのだから仕方がないだろうが、如何にももったいない。

 もったいないというのは、今日はクリスティアン・テツラフがベートーヴェンの協奏曲を弾いて協演したからである。東京からこれを聴くために駆けつけた人を――私の知り合いだけでも――会場で10人以上見かけたが、もっと多くの東京のファンたちにも聴かせてあげたかった。

 これほどスリリングで面白いベートーヴェンの「ヴァイオリン協奏曲」の演奏を聴いたのは、私にとっては多分ヒラリー・ハーンのそれ以来だ。
 特に第3楽章など快速奔放、ロンド主題が復帰する直前に短いカデンツァを入れるなど趣向を凝らし、自在に歌い、飛び跳ね、スコアが許容する範囲での即興的な自由さを謳歌する。第325小節以降の頂点個所では渾身のフォルティシモで上行・下行し、終了直前の3小節間を実に軽快な足取りのピアニシモで駆け上がったかと思うと、次の瞬間にはフォルティシモで2つの和音を叩きつけて結ぶ呼吸の、何という鮮やかさ。

 ハーディングとMCOがまた速いテンポで煽りに煽りつつ追い上げて行くので、この楽章は躍動の極致、音楽が火の玉となって突進するような趣を呈した。
 前述の、第329小節以降のオーケストラをスコアの指定通りの真のフォルティシモで押し切った演奏は珍しいが(レコードでのトスカニーニ以来か?)これでこそ、充分なクライマックスが築かれるというものである。
 (※追加註)なお、第1楽章では、ベートーヴェンがこの曲の「ピアノ協奏曲版」のために書いたティンパニ入りのカデンツァが使用されていた。こういう先鋭的な演奏には、このカデンツァがよく似合う。

 プログラム後半は、ドヴォルジャークの「新世界交響曲」。ハーディングとMCOにしては、意外にストレートな演奏だ。第1楽章提示部で、第1主題を2本のオーボエが繰り返す背景で、ほんの1、2小節間だが、ヴィオラとチェロが素晴らしい空間的な拡がりを響かせたのは、ハーディングの指示というより、室内楽的な自発性に富む楽員のアイディアによるものか?――その直前にヴィオラ首席がチェロ首席と呼吸を合わせるような表情を見せていたので・・・・。

 協奏曲の後には、満員の聴衆からテツラフに、スタンディング・オヴェーションを含む熱狂的な拍手とブラーヴォが贈られた。ソロ・アンコールはバッハの「無伴奏パルティータ第3番」の第3楽章で、これも大歓声に包まれた。
 これに対し「新世界」のあとの拍手はごく普通のものにとどまったが、オケがアンコールで演奏したシューマンの「ライン交響曲」のフィナーレは、絶大な拍手とブラーヴォを呼び、それはそのままハーディングのソロ・カーテンコールにまで続いた。今日のお客さんは、率直で、手ごわい。

 初夏の軽井沢は、美しい緑の雨。


コメント

第一楽章 カデンツァ及びティンパニー

はじめまして。会場で先生をお見かけしたので直接お聞きしたかったのですがコンチェルトのカデンツァとティンパニーのかけあうパターンははじめまして聴きました。何か特別な版を使用してるのでしょうか?他のプレーヤーでも 類似したケースはありますか?

昨夕、NJPの定期で大西さんに会ったら、この演奏会は素晴らしかったそうで、このコメントもありがたかったと喜んでいました。

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