2008-05

3・25(火)井上道義指揮オーケストラ・アンサンブル金沢
 東京定期公演

  サントリーホール

 「今や金沢の名物は兼六園だけではないぞ・・・・」というヘンなナレーションで始まったのは、プログラム後半におかれたドビュッシーのバレエ音楽「おもちゃ箱」。
 井上自ら、いろいろな声で語りつつ、踊りつつ、指揮をする。彼のギャグも昔はクサくて、聞いているこちらが照れくさくなったものだが、今や随分自然体になって、上手くなった。演奏が良いから、その懸命の大芝居も生きる。芝居に参加したオケのメンバーもろともに敢闘賞。

 前半はビゼーの「子供の遊び」、サン=サーンスの「ロンド・カプリチオーソ」、ドビュッシーの「小組曲」第4曲、サラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」と、ちょっと変ったプログラム。いずれも才気にあふれて色彩的な演奏だった。アンコールでの「シェルブールの雨傘」も同様。井上とオーケストラ・アンサンブル金沢、実にいい音楽をしている。
 
 さらに特筆すべきは、サン=サーンスとサラサーテでソロを弾いたネマニャ・ラドゥロヴィッチだ。旧ユーゴ生まれ、まだ23歳になったかならないか。ロック・ミュージシャンみたいないでたちの青年だが、彼の演奏がまた実に素晴らしい。鮮やかなテクニックに裏打ちされた歯切れの良さに加え、やや細身の音色が驚異的に美しく、何か不思議に優艶な色香のようなものを演奏に感じさせる。この年齢で、これほど聴き手をうっとりさせるヴァイオリニストも稀ではなかろうか。アンコールでのマスネの「タイースの瞑想曲」も含めて、今夜の大収穫。

 ホールの入り口やホワイエに、黒い背広を着たスポンサー関係者たちが無数にずらりと並んでいる光景は、地方都市オーケストラが東京公演を行なう時によく見るものだが、やはり異様だ。しかし今日は、入り口で、法被を着た人たちから輪島塗の箸が客に贈られた。プログラムには金沢の観光マップや情報紙が挟み込まれている。善いことだ。オーケストラといえど、地元の良さを広く知らせて回るという活動は大切である。思えば今日は、あの「能登半島地震」からちょうど1年目。

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